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歴史ある護衛艦「ゆうぎり」と海上自衛隊の実態。AI時代だからこそ大事な“人の力”

神奈川県・横須賀基地の海上自衛隊の艦艇が並ぶ岸壁で、一際歴史を感じさせるシルエットがある。護衛艦「ゆうぎり」だ。昭和63年に進水し、平成元年に就役して以来、35年以上にわたり日本の海を守り続けてきた。
近年、海上自衛隊ではAIや自動化技術を導入した新型護衛艦「もがみ型」の運用が始まっている。最新鋭の艦が約90名という少人数での運用を可能にする一方、「ゆうぎり」には今も約200名の隊員が乗り込む。「人の手」を必要とする旧型の艦には、効率化の波では決して代替できない何かがある。
本記事では、護衛艦「ゆうぎり」の紹介とともに、乗組員たちの声をお届けする。
<目次>
総勢200人で動く要塞、護衛艦「ゆうぎり」とは

そもそも護衛艦とは、敵の潜水艦・水上艦艇・航空機による脅威に対処する能力を備えた艦艇であり、日本の周辺海域における警戒監視や情報収集、有事の際の海上安全確保を担っている。
なかでも「ゆうぎり」は、あさぎり型護衛艦の3番艦にあたる汎用護衛艦だ。汎用護衛艦とは、対潜・対空・対水上といった主要な戦闘任務に対応する武器システムをバランスよく装備した艦種を指す。前後に2本のマストがそびえ立つ無骨な外観が、この艦の大きな特徴である。

最新鋭の艦では自動化が進み、1人が複数の役割を兼務する”省人化”が主流となっている。一方「ゆうぎり」では、多くの隊員がそれぞれの専門技術を深めていくスタイルが今も息づいている。専門的な知識や技術の基礎を地道に学ぶには、非常に良い環境とも言えるかもしれない。
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艦内を歩くと、最新鋭艦にはない光景に出会う。たとえば、かつて物理的な管を通じて艦内に指示を伝えた「伝声管」は、今は使われていないものの、設備としてそのまま残っている。さらに、万が一の浸水時に隊員が自らノコギリで木材を切り、穴を塞ぐための木材も置かれていた。デジタルが通用しない極限状態を想定した、徹底してアナログな生存技術。それが今もこの艦に息づいていると言えるだろう。
海賊対処や災害派遣など海上の支援活動

「ゆうぎり」の任務は防衛に留まらない。ソマリア沖での海賊対処や、震災時の災害派遣など、その活動は多岐にわたる。海の上は陸路が断たれた被災地への最短ルートとなり、ヘリでの物資輸送や医療チームの派遣など、護衛艦は動く拠点として活動する。
東日本大震災の初動では、護衛艦や輸送艦、掃海艇などが海側に展開し、海に流された人々の救助や捜索活動に従事した。また、能登半島地震の際には、陸路が断たれて孤立した地域の人々に対し、自衛隊内で編成した医療チームをヘリコプターで現地に直接送り込む派遣方式での医療支援を行った。海上自衛隊は人目につきにくい海の上から、被災地に対する重要な支援や救命活動を担っている。

そのような支援を行う護衛艦の洋上生活を支えるのもまた、隊員の任務だ。真水が貴重な艦内では、トイレや浴槽に海水を利用する。限られた座席の食堂では交代制で食事をとり、金曜日にはカレーを食べて曜日感覚を取り戻す。制約の多い環境の中で長い時間をともに過ごすからこそ、隊員同士の結束は家族以上に強固になっていく。
デジタル化が進むほど問われる「現場の習熟度」

護衛艦の任務は、対水上、対空、そして最も困難とされる対潜水艦戦にわたる。甲板には、重厚な装備が並ぶ。1分間に3,000発を放ち、迫りくるミサイルを弾幕で迎撃する防御の最終手段「ファランクス(機関砲)」。そして、遠方の潜水艦をミサイルで攻撃するための「アスロックランチャー」。近距離から遠距離まで、さまざまな脅威に対応する備えがこの艦には凝縮されている。
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現代の戦闘では膨大なデータが押し寄せ、分析の自動化も進んでいる。しかし、最終的な意思決定の場では、依然として人間の領域だ。情報の集約はシステムや各部署の担当によって行われるが、想定外の事態が起きたときや情報が多く優先順位をつける必要なとき、最後に決断を下すのは艦長である。どれだけ技術が進化しても、経験に裏打ちされた判断が求められる場面は必ず訪れる。
情報がデジタル化されるほど、それを受け取る側の習熟度が問われる。それは、マニュアルを超えたプロフェッショナルの現場だ。システムが一元管理する最新艦とは異なり、「ゆうぎり」では各専門部署の隊員が積み上げた技量が、そのまま艦の「防壁」の強度となる。
護衛艦で働く海上自衛隊員のリアルな声

今回、現場を支える2名の隊員に話を伺った。
「高校時代、空を飛ぶ戦闘機を見てパイロットを目指しました」
そう語るのは、飛行長兼副長の鈴木氏。現在は各部署の現場間のやりとりと情報の統括を担う。
「部署間で優先順位が対立し、板挟みになることもあります。でも、最後に向きを合わせて一つの目標に動けた時、この上ないやりがいを感じます」
かっこいいという純粋な憧れから出発し、艦全体を統括する立場へ。その言葉の端々からは、強い責任感がにじみ出ていた。
「小学生の頃、砕氷艦『しらせ』を見て自衛隊を志しました」と語る、向井氏。
現在は航空機整備や発着艦のサポートを担う。「長としての責任の重さを日々痛感しています。アナログな経験を積むことは、将来最新の艦に乗った時の揺るぎないベース(基礎)になるはずです」
南極への夢を胸に抱いた男が、今は護衛艦の重要な任務を静かに全うしている。
2人が共通して大事にしていることは、「人としての構え」だ。デジタルが進む今だからこそ、今の環境で何ができるかを考え、泥臭く役割を全うする。その積み重ねが、AIには決して真似できない「信頼」を育てていく。

「私たちは海の上にいるので、なかなか皆様の目に触れることはありません。でも、見えない場所で国を守っている人間がいることを知ってほしい」
海上自衛隊で働く現場の声、これがリアルであり、私たちが知るべきこと。目につかないところで海上自衛隊の隊員が活躍しているからこそ、我々の安全が確保されていると言っても過言ではない。
便利さと効率に注力される今、護衛艦「ゆうぎり」の取材で目にしたのは、どれだけ技術が進歩しても、最後の一線を守るのは「人の経験値」と「責任感」であるという事実だった。
横須賀の海に浮かぶ古い鉄の艦。そこには、デジタルでは描き切れない、熱い人間の鼓動が確かに響いていた。
艦艇見学(護衛艦・潜水艦)として一般公開されている日があるので、自身の目で見たい方はこちらのページへ。
https://www.mod.go.jp/msdf/yokosuka/event/event.html
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