
医学の可能性を切り開くために命を賭けた勇気ある女性、リサ・ピサーノ氏が7日に亡くなりました。リサ・ピサーノ氏は人工心臓ポンプを装着した状態で、遺伝子改変されたブタの腎臓移植を受けた初の人物でした。
移植手術を行ったニューヨーク大学ランゴン・ヘルスの移植研究所責任者であるロバート・モンゴメリー医師は、「ピサーノさんは勇敢で他人思いだった」と語っています。また、「医学や手術、異種移植へのピサーノさんの貢献は計り知れない。ピサーノさんのおかげで、誰かを生かすために別の人が死ななくても済む未来の実現に近づいた」と述べました。
リサ・ピサーノ氏は4月12日に移植手術を受けており、移植された腎臓は血流不足で機能せず、5月29日に摘出手術を受けています。ニューヨーク大学ランゴン・ヘルスによると、ブタの腎臓が生きた患者に移植されるのは2例目で、ブタの胸腺も一緒に移植されたのは初めてとのことです。
リサ・ピサーノ氏は手術後の記者会見で、「少なくとも誰かが恩恵を受けるはず」と語っていました。その言葉通り、リサ・ピサーノ氏の勇気ある決断は、将来の医療に大きな一歩を刻みました。
現在、移植待機リストには8分に1人が追加され、毎日17人が臓器を待ちながら亡くなっているといいます。リサ・ピサーノ氏の功績を無駄にしないためにも、さらなる研究と挑戦が求められています。
ネット上では、「異種移植にチャレンジして亡くなった方の命はたくさんの腎臓病の人々のためにきっと役立つはず」「とても尊い勇気だと思います」「透析患者の負担軽減にもなるし国の財政への貢献も計り知れない」などの意見が寄せられました。
今年3月にも、遺伝子改変ブタの腎臓移植を受けた患者が死亡
マサチューセッツ総合病院は11日、遺伝子改変ブタの腎臓移植を受けたリチャード・「リック」・スレイマン氏の死亡を発表しました。リチャード・「リック」・スレイマン氏は今年3月、マサチューセッツ総合病院で、世界で初めて脳死状態ではない患者として遺伝子改変ブタの腎臓移植を受けた方です。
移植手術から2ヶ月後の死亡でしたが、病院によると移植が直接の原因ではないとのことです。以前から腎臓病や2型糖尿病、高血圧を患っており、2018年に受けた死亡ドナーからの腎臓移植も昨年には機能しなくなっていました。
3月の移植手術後、医師団はブタの腎臓が順調に機能していると認めていましたが、悲しい結果となりました。病院は声明で、「スレイマン氏は永遠に、世界中の数え切れないほどの移植患者にとっての希望の光となるだろう」と称えています。