近年、老舗企業の倒産が急増しています。帝国データバンクによると、創業・設立から100年以上の老舗企業の倒産件数が、2024年上半期に前年同期比95%増の74件に上りました。
これは2000年以降で過去最多であり、年間ベースではリーマン・ショック時の2008年(120件)を大幅に上回る可能性があります。主な要因は、物価高による採算悪化と後継者不在です。
業種別では、製造業(22件)と小売業(21件)がともに全体の約3割を占めています。創業200年超の老舗和菓子店「青木万年堂」は、3月28日に破産手続きを開始しています。コロナ禍の影響で資金繰りが悪化し、収束後も客足が戻らず全店舗を閉鎖しました。
1858年創業の食品スーパー「三谷屋」も6月に破産手続きを開始。大手チェーンの進出で売上が伸び悩み、光熱費や仕入れ価格の上昇が追い打ちをかけました。
帝国データバンクの旭海太郎副主任は、「近年の物価高で取引先の資金繰りも苦しくなる中、長年の付き合いを生かした価格転嫁交渉などが通用しづらくなっている」と分析しています。資金体力のある大手企業が低価格と安定供給でシェアを確実に広げる中、老舗企業にとっては厳しい事業環境が続くと見られています。
ネット上では、「個人や家族経営の店はどこも後継者不足で大変だろう」「都心にあった老舗の洋食屋なんかがコロナ後バタバタ潰れてますね」「これには世代交代が大きく影響している気がします」などの意見が寄せられています。
2023年、コンプライアンス違反によって老舗企業が倒産
2023年、老舗企業の相次ぐ倒産が業界に衝撃を与えました。長い歴史と信頼を誇る企業の思わぬ幕切れに、多くの人が驚きを隠せませんでした。
1872年創業の白井松器械は、20年以上にわたる粉飾決算が発覚し、2023年9月に民事再生法の適用を申請。1900年創業のプロルート丸光も、雇用調整助成金の不正受給などの疑義が生じ、会社更生法の適用を余儀なくされました。
長年培ってきた信用が、コンプライアンス違反によって一瞬で崩れ去る危うさを、これらの事例は物語っています。さらに、2024年上半期の老舗企業倒産74件のうち、「物価高倒産」が14件、「後継者難倒産」が11件を占めるなど、事業継続のリスクは老舗企業も例外ではありません。
2024年の企業倒産全体が1万件突破の勢いで増加する中、老舗企業の半数近くを占める小規模企業は、より厳しい状況に直面しています。かつての「老舗=安泰」というイメージは、もはや通用しなくなりつつあるのかもしれません。
日本の老舗企業は4万3,631社。毎年約2,000社が100年経営企業の仲間入りをしていますが、その存続が危ぶまれる状況です。