東京都が、豪雨対策の一環として画期的な「地下河川」の建設を検討しています。この構想は、既存の地下調節池を地下水路で繋ぎ、大量の雨水を東京湾に直接放流するというものです。
地下河川は、激甚化する豪雨災害に効果的に対応できるとされています。都は「効率的かつ効果的な整備手法の1つ」と高く評価しており、地下調節池の新設と比べて用地面積や事業費、工費を抑えられるメリットがあります。
地下河川の構想は、1985年に当時の鈴木俊一都知事が打ち出したものでした。しかし、その後は長らく言及されることがありませんでした。
2021年の都議会で、小池百合子知事が「将来の地下河川化を含めて延伸の検討を進める」と表明し、さらにその後の記者会見では「もう1本地下に川を繋げる」と力強い意欲を示しています。
川に放流する地下河川の整備は大阪府でも進められていますが、専門家によると、海への大規模な放流は世界的にも珍しいとのことです。東京都の新たな取り組みが、豪雨災害対策の新たな選択肢となるのか、今後の動向が注目されます。
全長約15kmに及ぶ壮大なプロジェクト 浸水面積を56%削減可能
東京都が豪雨対策として検討している地下河川は、白子川地下調節池、神田川・環状七号線地下調節池、目黒川流域調節池を結ぶ、全長約15kmに及ぶ壮大なプロジェクトです。
都の試算では、地下河川の整備により、東日本台風級の豪雨でも浸水面積を56%削減できるとのことです。地下調節池の新設と比べても、用地面積や事業費、工費を抑えられるメリットがあります。
しかし、政策研究大学院大学の知花武佳教授は、「海まで繋ぐのは理想だが、これだけの規模のトンネル型の地下河川は世界でも例を聞かない」と指摘。事業化のハードルは高いと分析しています。
都内では近年、短時間の集中豪雨が頻発し、地下鉄の浸水被害が深刻化しています。8月21日には、都営地下鉄の国立競技場駅や東京メトロの市ケ谷駅などで浸水が発生しました。「急激な雨だったので対応が間に合わなかった」と、都営地下鉄の担当者は当時の状況を振り返ります。
都は、1時間雨量75mmまでを想定した整備を進めてきましたが、気候変動を踏まえ、目標降雨量を引き上げる方針です。地下河川の実現には技術的、財政的な課題が山積みですが、都市型水害への新たな対策として、今後の進展が注目されます。