過去最多3482件の障害者虐待|福祉施設での虐待を防ぐ方法とは

障害者施設 虐待 厚生労働省 過去最多 

令和4年度12月20日、厚生労働省から「令和4年度都道府県・市区町村における障害者虐待事例への対応状況等(調査結果)」が公表されました。
資料によると、家族・福祉施設で虐待を受けたと判定された障害者数が、過去最多の3482件確認されたそうです。

障害者福祉施設を運営している方にとって、障害者虐待は身近な問題です。
調査結果を読み取ることで、障害者虐待の現状を知り、自施設での予防策を立てられます。

本記事では、障害者福祉施設における虐待の現状と福祉施設で取り組める予防策について解説します。
自施設で障害者虐待の予防策を考えたい方は、ぜひ最後までご覧になってください。

【令和4年版】|障害者福祉施設の虐待の実態とは?

障害者福祉施設での虐待件数は、令和4年度が過去最高となりました。
詳細を読み解くと、虐待が起きやすい環境・状況を把握できるので、自施設での予防策を立てやすくなります。

本記事では、厚生労働省から公表された「令和4年度都道府県・市区町村における障害者虐待事例への対応状況等(調査結果)」について、以下の内容を中心に解説します。

  • 障害者虐待の件数推移
  • 発生原因
  • 虐待者の年齢・性別
  • 被虐待者の年齢・性別・障害種別

本記事では、以下の厚生労働省から発表された資料を基に解説しています。

出典・引用:厚生労働省|令和4年度障害者福祉施設従事者等による障害者虐待

障害者虐待の件数推移

障害者福祉施設での虐待件数は増加しています。
以下は、障害者福祉施設における、相談・通報件数、 虐待判断件数、 被虐待者数のグラフです。

引用:厚生労働省|令和4年度障害者福祉施設従事者等による障害者虐待

令和4年度の件数は、相談・通報件数4104件、虐待判断件数956件、被虐待者数1352人となっています。
この数値は、平成24年以降の調査においてどの数値も過去最多です。

また、令和3年度の数値と比較すると以下のことが分かります。

相談・通報件数虐待判断件数被虐待者数
令和3年度3208件699件956人
令和4年度4104件956件1352人
増加率27%36%41%

相談・通報件数、虐待判断件数、被虐待者数の全ての数値が増加しています。
被虐待者数に関しては、40%を超える増加率です。

福祉施設において、障害者虐待は対策すべき課題と言えるでしょう。

虐待者の年齢・性別

福祉施設において、虐待を起こした人の年齢を知ることで予防策を策定できます。
以下は、障害福祉施設において虐待を起こしてしまった虐待者の年齢・性別の詳細です。

【性別】

性別男性女性
構成割合69.9%30.1%

虐待者の性別は男性69.9%、女性30.1%です。
男女で比べると、男性の割合が高くなっています。

【年齢】

年齢~29歳30~39歳40~49歳50~59歳60歳以上不明
構成割合6.2%12.5%17.8%17.9%20.5%25.2%

虐待者の年齢は、今回の調査では不明であったケースが最も多くなっています。
年齢については「60 歳以上」が 20.5%と最も多く、次いで「50~59 歳」が 17.9%、「40~49 歳」が 17.8%と続きます。

40歳以上の構成割合は56.2%と過半数となっています。

被虐待者の年齢・性別・障害種別

福祉施設での被虐待者の詳細を知ることで、虐待が起こりやすい状況・環境を理解できます。
以下は、被虐待者の年齢・性別・障害種別です。

【性別】

性別男性女性
構成割合63.6%36.4%

被虐待者の性別は、男性63.6%、女性36.4%です。
男女で比べると、虐待者と同様に男性の割合が高くなっています。

【年齢】

年齢~19歳20~29歳30~39歳40~49歳50~59歳60歳以上不明
構成割合14.3%17.2%17.8%18.4%17.0%11.3%4.0%

年齢についての割合は、「40~49 歳」が 18.4%、「30~39 歳」が 17.8%、「20~29 歳」が 17.2%、「50~59 歳」が 17.0%、「~19 歳」が 14.3%です。

【障害種別】

種別身体障害知的障害精神障害発達障害難病等
構成割合21.0%72.6%15.8%3.1% 1.3%

被虐待者の障害の種別では、「知的障害」が 72.6%と最も多く、次いで「身体障害」が21.0%、「精神障害」が 15.8%です。
また、更に詳しく見ると障害支援区分のある者が 74.7%を占めていました。
他にも行動障害がある方が全体の33.5%を占めていました。

そのため、対応が難しい利用者に対しての虐待が多いことも言えるでしょう。

障害者福祉施設でできる|障害者虐待を防ぐ方法とは?

障害者虐待は、福祉施設全体で予防することが大切です。
施設長など施設運営する立場であれば、予防策を講じることが障害者虐待を防ぐために必要です。

本章では、障害者虐待を防ぐための方法を2つ解説します。
本章の解説では、以下の厚生労働省の資料を基に解説していきます。

出典:厚生労働省|障害者福祉施設等における 障害者虐待の防止と対応の手引き 

管理職を含めた職員に対する研修

1つ目は、管理職を含めた職員に対する研修です。
先述の厚生労働省の調査では、市区町村等職員が判断した虐待の発生要因が挙げられています。

そのなかで最も割合を占めたのが、「教育・知識・介護技術等に関する問題」です。
被虐待者の種別を見ても、支援区分や行動障害がある方の虐待の割合も多くなっています。

職員が疲弊しないためには、適切な知識を習得する研修が必要です。
厚生労働省では、障害者虐待防止研修の種類を5つに分けて考えています。

  • 管理職を含めた職員全体を対象にした虐待防止や人権意識を高めるための研修
  • 職員のメンタルヘルスのための研修
  • 障害特性を理解し適切に支援が出来るような知識と技術を獲得するための研修
  • 事例検討
  • 利用者や家族等を対象にした研修 

自施設で5つの研修ができているかを振り返り、足りない部分を補っていくことが必要でしょう。

職場環境整備

2つ目は職場環境整備です。
虐待の発生要因として、「虐待を助長する組織風土や職員間の関係性の悪さ」も多くを占めます。

虐待が起きやすい職場では、「報告ができない」「ストレスがたまりやすい」特徴があります。
職場環境を整備して、職場全体で虐待を起こさない風土を作っていくことが大切です。

厚生労働省では、具体的な虐待防止の環境整備として以下の5つを挙げています。

  • 事故・ヒヤリハット報告書、自己チェック表とPDCAサイクルの活用 
  • 苦情解決制度の利用 
  • サービス評価やオンブズマン、相談支援専門員等外部の目の活用
  • ボランティアや実習生の受入と地域との交流
  • 成年後見制度や日常生活自立支援事業の利用

虐待が起きやすい環境の特徴として、閉鎖的なため虐待を発見しても相談しにくい環境があります。
環境を整えるために、外部からの視線・人をとり入れるオープンな環境づくりが大切です。

障害者虐待を防ぐには、職場全体の取り組みが鍵

障害者福祉施設における虐待および防止方法について解説しました。
令和4年度最新の調査では、障害者福祉施設における虐待は、過去最高を更新しています。

そのため、障害者福祉施設では防止策を講じることが大切です。
職場全体の雰囲気を良くしていくことで、虐待を起こしやすい状況を減らせます。

大切なことは、1人に頼ってしまうのではなく職場全体で助け合える環境です。
ぜひ、虐待が起きづらい環境づくりをめざしてやっていきましょう。

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