韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は7日、国民に向けて演説を行い、3日夜に突如宣布した非常戒厳について謝罪しました。尹錫悦氏は、この決定が大統領としての切迫した思いから出たものの、国民に不安と不便をもたらしたことを認め、心よりお詫びすると述べました。
また、宣言によって生じた法的および政治的責任から逃れるつもりはないと強調し、再び非常戒厳が宣布されることは絶対にないと明言しています。さらに、自身の任期を含め、「国をどう安定させるか、その決定は我が党に委ねる」とコメントしました。
一方、主要野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は、尹大統領の演説を強く批判しています。現在の韓国にとって最大のリスクは大統領自身の存在であり、尹政権を早期に終わらせるには辞任か弾劾しか道はないと主張しました。
尹錫悦大統領、3日夜に「非常戒厳」を宣布 発令は6時間ほど
韓国の尹錫悦大統領は3日夜、唐突に「非常戒厳」を宣布しました。国会での予算案をめぐる与野党の対立が背景にあったとみられています。
これを受け、国会は非常戒厳の解除を要求する決議案を可決しました。尹錫悦氏は4日朝の閣議で解除を決定しましたが、非常戒厳が発令されていたのはわずか6時間ほどでした。
一方、野党6党は大統領弾劾の議案を国会へ提出し、5日には発議されました。警察も大統領を「内乱」の容疑で捜査を開始していると発表。与党「国民の力」の韓東勲 (ハン・ドンフン) 代表は6日、大統領が野党幹部らの逮捕を指示していた証拠があると主張しました。
尹錫悦政権は少数与党のもと、これまで厳しい政権運営を強いられてきました。野党からは強権的だと批判を受けてきた経緯があります。また、金建希(キム・ゴニ)夫人をめぐる数々の疑惑も浮上しており、先月の世論調査では支持率が17%と低迷していました。
非常戒厳宣布直後には、ソウルの国会周辺に多くの市民が集まり、警官隊ともみ合いになる一幕もありました。上空には軍のヘリコプターが飛行する異様な光景が広がったといいます。
韓国の政局は混迷を深めており、先行きは全く予断を許さない状況です。この国の民主主義が、いま重大な岐路に立たされているのは間違いないでしょう。