金融庁に出向していた元裁判官の佐藤壮一郎被告(32)が、職務上知り得たTOB(株式公開買い付け)に関する未公開情報を利用して、2024年4月から9月にかけて自身の名義で10銘柄、合計952万円分の株式を購入したとして、インサイダー取引の罪に問われています。
証券取引等監視委員会の任意の調査に対し、佐藤壮一郎被告は「簡単に利益が得られると思った」と説明していたとのことです。
一方、東京証券取引所に勤務していた細道慶斗被告(26)も、職務を通じて入手したTOBの非公開情報を父親である細道正人被告(58)に漏洩した罪で起訴されています。細道正人被告は、その情報に基づいて3つの銘柄を合計1,707万円で購入し、不正な利益を得たとしてインサイダー取引の罪に問われています。
最高裁判所の人事局長を務める徳岡治氏は、一連の事件を「極めて遺憾」と表明し、裁判官の規律の保持を徹底する考えを示しました。東京証券取引所の運営会社である日本取引所グループは、再発防止策の強化と関係者からの信頼回復に注力していく方針をコメントで明らかにしています。
金融機関におけるコンプライアンス意識の向上と、内部管理体制の見直しが急務となっています。ネット上では、「裁判官が金融庁に行ってインサイダー取引に手を染めるとか呆れてものが言えん」「せっかくいい職業につけたのに勿体ないな」「まだまだ若いし、弁護士事務所などでやり直しはきくと思う」などの意見が寄せられています。
元裁判官の佐藤壮一郎被告とは?2017年に司法試験を合格
元裁判官の佐藤壮一郎被告は2017年の司法試験合格後、大阪や那覇の地方裁判所で判事補を務め、2024年4月から任官10年未満の裁判官を対象とした制度を利用して金融庁に赴任しました。企画市場局企業開示課の課長補佐として、TOBの実施予定日や価格などの機密情報に接する立場にあったのです。
金融庁は、東京証券取引所の元社員による不正情報伝達事件を受け、日本取引所グループと東証に対し、法律に基づく報告徴求命令の発出を検討しています。報告徴求命令とは、金融機関における不適切な取引や債務超過といった経営上の重大問題について、事実関係や財務状況などの報告を法的に要求するものです。
金融庁は原因究明に加え、情報管理体制や研修実施状況の報告を求める見通しで、日本取引所グループの再発防止策の実効性が問われることになりそうです。