
4月13日に大阪・関西万博がはじまり、中盤に差し掛かろうとしている。この期間、さまざまなメディアで万博について取り上げられてきたが、スタッフ側の目線で書かれた万博の記事は少ないように思う。幸いにも、私はゴールデンウィーク期間中にチェコパビリオンで働く機会を得た。その経験を基に、スタッフ側から見た万博をお伝えしたい。
<目次>
チェコパビリオンの魅力と見どころ
なぜ、私がチェコパビリオンで働けたのか、まず、その経緯から説明する必要がある。今回、私はチェコ政府観光局公認の「チェコ親善アンバサダー」として、チェコパビリオンで働いた。つまり、単なる万博の現地スタッフではない。
私は2018年から、チェコ親善アンバサダーを務めている。アンバサダーは1年ごとの更新であり、2025年度は国内外で44名のアンバサダーが活動している。アンバサダー就任には政府観光局の審査を通過する必要がある。私がアンバサダーに就任した経緯は、また別の機会に書こうと思う。
チェコパビリオンは、独自パビリオンの「タイプA」である。パビリオンのテーマは「人生のための才能と創造性」だ。ボヘミアンガラスで覆われた円筒型のパビリオンでは、チェコの画家アルフォンス・ミュシャの未完の作品から着想を得た壁画や、ガラス作品を展示。屋上には会場を一望できるスペースと、「CTPラウンジ」と呼ばれるガラス張りの建物がある。
また、円筒形の建物の中には「大末ホール」がある。ホールでは、毎日ではないものの、さまざまなイベントを開催。そして1階のレストランでは、チェコ料理が楽しめる。
チェコ政府観光局では、5月3日から6日にかけて、チェコパビリオンでさまざまなイベントを行った。「大末ホール」では、チェコ産のゲームの紹介、人形劇、旅行情報のプレゼン、東京外国語大学チェコ語科による語劇などのプログラムが組まれた。
「CTPラウンジ」では、「チェコ観光案内コーナー」を設置し、サンプル品を通じてチェコ料理を紹介。さらに、チェコガラスのバールを使ったアクセサリーのワークショップを実施した。期間中にはチェコビールの提供もあった。

チェコパビリオン「CTPラウンジ」での活動
私は5月3日と4日の9時・10時から夕方まで「CTPラウンジ」にある「チェコ観光案内コーナー」で勤務した。主な役割はブースでの説明と、5月4日16時50分からのチェコ旅行に関するプレゼンテーションである。
ブースはテーブル1つのみで、そこにチェコ旅行に関するパンフレットやチラシを置いていた。言ってしまえば、ボーっとブースの前に立っていても、仕事としては成立する。
しかし、単にパンフレットを配布するだけなら、ブースにアンバサダーを立たせる意味はない。チェコの旅行情報は今やインターネットの世界にあふれている。私は2005年の「愛・地球博」(愛知万博)にも行ったが、当時と比較して、各パビリオンで配布されるパンフレット類は格段に少なくなっている。
そのため、パンフレットを配布するだけでなく、来訪者それぞれにマッチしたチェコの旅行情報を伝えるように心掛けた。なかには頻繁にチェコを訪れている方もいた。そのような方には、インターネットでは入手しにくいマニアックな情報も伝えるよう努めた。
プレゼンテーションは「大末ホール」で行い、チェコの温泉街、カルロヴィ・ヴァリを紹介。ここでも、インターネットで入手できる基本情報に加えて、私が現地で得た独自の情報を交えて説明した。
アンバサダーとしての考え方は人それぞれだが、私は「個々人に合わせた価値あるチェコの魅力と観光情報を伝える」ことを心掛けた。

パビリオン側で感じた人数制限の必要性
ところで、大阪・関西万博では「並ばない万博」を標ぼうしている。しかし、実際には各パビリオン前で長蛇の列ができている。パビリオンの外から見ると、内部にはスペースの余裕があるように見えるにもかかわらず、なぜ並ばなければならないのか。このような疑問を持っている方も多いのではないかと思う。
パビリオンで働いた経験から述べると、パビリオン内の人数が増えすぎると、来訪者一人ひとりに十分な対応や接客を行うことが難しくなるのが現実である。
実際、お昼時になると「CTPラウンジ」ではビールを待つ人であふれ、一時的ではあるがブースでの対応が追いつかない状況となった。また、チェコ料理のサンプルを十分に説明する余裕もなく、単にサンプルを素通りする方も見られた。
来訪者の立場から考えると、混雑によって、「本来得られる情報が得られない」ということになる。一方、パビリオン側から見ると、一時的にスタッフを増員することは現実的に難しい。来訪者一人ひとりにきちんと対応するためには、人数制限をする必要性を強く実感した。
個人的に、万博パビリオンで働いたことは本当に貴重な経験となった。今後も、さまざまな立場から万博を見つめていきたいと思う。
