
米コーヒーチェーン大手のスターバックスは11月3日、苦戦する中国事業の過半数株式を現地投資ファンド「博裕資本(ボーユー・キャピタル)」に売却することを発表しました。企業価値は40億ドル(約6,100億円)と評価され、博裕資本が最大60%の株式を取得するのに対し、スターバックスは40%を保有し続けます。
同社にとって2番目に大きな市場である中国で、初めて外部パートナーを経営の中枢に迎えるこの決断は、スターバックスの中国戦略の根本的な転換を象徴しています。売却対価や保有分評価額に加え、今後10年以上にわたるライセンス料収入をあわせた総価値は、総額130億ドルを超える見通しです。
売却の背景にあるのは、スターバックスが中国市場で直面する深刻な競争環境の悪化です。市場調査会社ユーロモニター・インターナショナルのデータによると、スターバックスのシェアは2019年の34%から昨年は14%にまで急落しました。2017年のピーク時は42%を占めていたことから、急速な市場地位の喪失を物語っています。
この急落の主因は、中国国内企業による参入です。瑞幸咖啡(ラッキンコーヒー)に代表される国内ブランドが次々と市場に登場し、低価格で多様な商品を提供しています。若年層を中心に、経済の成長鈍化に伴い消費意欲は低下しており、より安価なコーヒーを求める消費者が増加しているのです。
中国国内の店舗数は、スターバックスの約8,000店舗に対し、ラッキンコーヒーは直営・提携あわせて2万以上。ラッキンコーヒーはテイクアウトとデリバリーを主体とするビジネスモデルで価格もスターバックスより安く、スターバックスは競争上の大きな劣位に置かれています。
スターバックスは、ブランドと知的財産の所有権を引き続き保有し、新会社にライセンスを供与し続けることで、ブランド価値の維持を図ります。両社は合弁会社を設立し、引き続き上海を本社として中国国内の店舗を管理・運営していく方針です。
戦略転換と今後の展開
今回の提携により、スターバックスは中国市場での事業戦略を大きく転換することになります。従来の「サードプレイス」としての高級路線から、庶民向けの廉価路線へのシフトが予想されます。博裕資本は中国の名だたる企業に出資してきた巨大ファンドで、現地市場の強固なネットワークとノウハウを持っており、地域密着型の店舗運営が目標です。
スターバックスは2024年の年次報告で、中国事業のリスク要因として景気減速だけでなく「米中緊張の激化」を指摘。関税措置やボイコット、「政治的感受性の高まり」も経営課題となっています。現地資本に経営権を委ねることで、こうした政治的・地政学的リスク軽減の狙いもあるとみられています。












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