反社排除でETC使えず 公共インフラ利用権めぐり各地で提訴

反社排除でETC使えず 公共インフラ利用権めぐり各地で提訴

高速道路のETC利用をめぐり、暴力団排除と公共インフラへのアクセス権という二つの価値がぶつかり合う法廷闘争が各地で起きています。クレジットカードを持たない人向けの「ETCパーソナルカード」発行を断られた40代男性が、東京地方裁判所で高速道路会社6社と国を訴えました。争点となっているのは、カード利用規約に盛り込まれた「反社会的勢力の排除条項」です。

ETCパーソナルカードは、クレジットカード契約を必要としない人のために、高速道路会社が共同で提供するサービスです。利用者は保証金を預託し、通行料金は後日、指定口座から引き落とされる仕組みになっています。車載器にカードを挿入すると料金所のゲートを通過でき、料金支払いが自動化される点は、通常のETCカードと変わりません。

ところが、この便利なサービスの利用規約には、暴力団排除の観点から「反社会的勢力に属する者には発行しない」との条項が設けられています。男性はこの条項を理由に申し込みを拒絶され、会員としての地位確認と損害賠償を求めて提訴に踏み切りました。あわせて国に対しても、監督義務違反があったとして国家賠償を請求しています。

原告側が主張する論点は、憲法上の基本的権利に関わるものです。弁護団は「特定の属性を理由に道路という基本的なインフラを利用できなくすることは、合理性を欠く差別であり、憲法違反だ」と訴えています。

さらに、ETC専用化が進む現状を踏まえ、「カード発行を拒否されれば、事実上、高速道路から締め出されることになる」として、道路法にも反すると主張。高速道路会社6社に対しては、契約が成立しているにもかかわらずカードを発行しないのは債務不履行であり、排除条項の適用は不法行為に当たると指摘しました。

これに対し高速道路側は、排除条項の正当性を強調しています。過去の裁判では「政府の暴力団排除方針や社会的要請に基づくもので、合理的な区別であり憲法に違反しない」と反論してきました。社会全体で暴力団排除を進める必要性と、公共サービスを等しく利用する権利のどちらを重視すべきか、司法判断が注目されています。

ETC専用化で問題深刻に 全国で訴訟拡大

首都高速道路は2028年春までに、一部を除く全料金所をETC専用にする計画を進めています。こうした状況を背景に、ETCカード発行拒否をめぐる訴訟は全国に広がっており、名古屋など各地で同様の裁判が約5件起きている状況です。

10月31日の第3回口頭弁論後に開かれた記者会見で、井桁大介弁護士は「ETCカードを作らせないことは、暴力団を高速道路から排除する以外の何物でもない」と述べ、排除条項の実質的な効果を指摘しました。ETC専用化という技術革新が、結果として特定の人々を公共インフラから排除する手段になりかねないという問題は、今後も議論が続くとみられます。

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