ニュースでは触れられない“少年審判”の現場。「結果」ではなく「過程」の重みもあること

ニュースでは触れられない“少年審判”の現場。「結果」ではなく「過程」の重みもあること

少年法は子供を甘やかしているのか。私は、そんなことはないと考えている。一般の人がニュースを聞いて「甘い」という感想を抱く事件は、そもそも少年法の問題ではないことが多い。

18歳未満だと死刑にしないといった規定は確かに少年法にあるが、その規定が理由で結論が変わっているという事案はまれである。大半は、単に刑法に基づく量刑評価の結論に過ぎない。そのため、おそらく少年法が関係しない成人の事件であっても、同じように「甘い」という感想を抱いていると推測される。

また、少年法の手続になっていることで、むしろプロセスとしては厳しくなっている部分もあるが、少年法の手続として行われている限り諸々が公開されないため、その厳しい側面は一般の人に伝わる機会がないところも、誤解の要因と考えられる。

そこで本記事では、少年事件に定期的にかかわっている立場から、少年法にしたがった手続がどのように行われるかを解説していこうと思う。

<目次>

示談によって審判からは逃げられない

事件を起こした16歳女性の調査を行う検察官

少年事件では、犯罪があったのなら全て家庭裁判所に事件を送ることになっている。これを、専門用語で全件送致主義と言う。

たとえば20歳未満が万引きをしてしまった場合、成人で前科前歴がないのなら、示談をして許してもらい、あるいは被害品を弁償するだけでも、不起訴になって特に裁判を受けることもないというかなり穏当な処置も期待できる。

しかし、少年事件だと、そうはいかない。非行があった背景を家庭裁判所で調査し、その問題について少年的なケアをしなければならないと考え、結局裁判所まで手続が継続する。

たとえば20歳未満が性犯罪を行ってしまった場合、成人だと刑事裁判になるため、公開の法廷での証言が必要になる。自身の性被害を公開の場で語ることは精神的な苦痛が伴い、あるいはそこまでいかない人でも、特にその行為によって相手を罰せられる以上の何か、経済的メリットなどは得られないことから、負担に見合わないと考える人もいる。

そのため、被害者は示談をし、刑事裁判への参加を望まないことがあり、この場合は検察官も、無理に刑事裁判を行おうとはせず、不起訴にすることがある。どうしてこんな凶悪なレイプ犯が何度も示談で許されているのだといった世間的批判を目にすることもあるが、少なくとも捜査機関は、レイプ級の事件について許していることはない。単に、被害者の意思を尊重しているにすぎない。

しかし、少年事件だと、被害者が出席しないでも裁判をすることができるため、警察や検察で作成した調書だけで、事実認定は可能である。そのため、犯罪があったのであればルール通り、家庭裁判所に行くことになる。少なくとも、捜査機関が家庭裁判所に送ることを躊躇する理由はない。

もちろん、犯罪を争っている場合には、証人尋問的な手続が入る少年事件もあるのだが、これでなお基本的に犯罪があったことを前提としている示談をするというのはかなり特殊な場合である。

犯罪行為があったのなら、裁判所からの評価を受けなければならなくなる。お金で事件を封じられない。この要素が成人より強くなるのが少年事件である。

処分の内容に影響するファクターが大人と異なる少年審判

少年法

「もう〇〇歳なら、大人だろう。大人と同じ扱いを受けさせろ。」と言う声も、少年法や少年事件に関するニュースで良く聞く。しかし、大人として扱う方が厳しいかというと、そうとは限らない。少なくとも、社会のために更生させるという観点からは、大人の事件の方がルーティーンで処理してしまっているところもあると思っている。

これは、成人の刑事裁判が犯罪行為そのものに対する軽重の評価を基軸にするのに対し、少年事件では問題を起こした人間や、その家族の特性からどのような処分が教育に必要かという点を重視することが一つの要因である。もう少し詳しく説明しよう。

成人の事件における量刑評価の方法は、裁判員裁判に裁判員で参加すると一番イメージがつくようになると思われる。そこでは、ある犯罪について、同種の犯罪行為と比べて行為・結果・犯行に至る経緯の部分(=犯情という)においてどの程度悪質なのか、悪質の程度が相対的に低いのかが議論され、一定の量刑幅が法定刑の中から選択される。

たとえば、強力な武器を用いたか・あらかじめ特殊な準備をして組織的計画的であったかなど(行為)、どれだけの被害額やケガなどをもたらしてしまったのか(結果)などで概ねの量刑枠が決まってしまう。

もちろん、反省の度合いなどの一般情状も考慮の対象にはなるのだが、刑事裁判における主戦場で結論を大きく変えるのは、あくまでどういう犯罪だったかという部分であり、個性を意識した調整、たとえば再犯可能性への対処といった部分を中心に議論される仕組みにはなっていない。

一方の少年事件は、要保護性という概念によって、処分を決める。専門的な言葉で言うなら、「犯罪的危険性」と「矯正可能性」といい、要するに再犯のおそれがどれくらいあるか、そしてそれが刑事処罰ではなく保護処分という少年向けの措置によって是正できるかという点を検討し、処分を決めることになる。

具体的には、非行事実の態様、回数、原因・動機、保護処分歴、心身の状況、性格、反省の程度、保護者の有無とその保護能力の程度、職業の有無・種類、職場・学校・友人関係、反社会的勢力との関係、家庭や地域の環境、行状一般等が重要とされる。

これは、成人の事件だと一般情状と言われ、上記の成人事件において犯情で定まった量刑枠の中での調整弁としての機能にとどまり、結論を大きく変える要素にはならない部分が多数含まれている。

つまり、犯罪としての性質やカテゴリといった犯罪行為(過去)により注目しているのが大人の刑事裁判であり、個人の再犯抑止といった未来により注目しているのが少年事件とも、ざっくりわけられるかもしれない。

なお、少年法改正によって生まれた特定少年という18歳・19歳向けの新しいカテゴリにおいては、少年事件であっても「犯情」をもとに処分を判断するよう求められており(もっとも、ここでいう犯情が成人の刑事裁判における犯情とそのまま一緒かは議論の余地がある)、成人の事件の評価基準に近い形で、ただし少年の審判である非公開の原則や証拠法上の制限を受けない環境で判断を受ける中間的な位置づけにある。

考慮要素の差が具体的にどのようにあらわれるか

少年事件に向き合う弁護士

成人事件において、たとえば特殊詐欺や闇バイト事件などは、行為が組織的・計画的で巧妙であり、被害額も全体で行うことから大きくなるため、量刑が重くなりがちであり、執行猶予が認められる拘禁3年以上の刑しか出せない犯情評価になってしまうことも多い。少年法に対する厳罰主義者は、その犯罪が重いものであるから重い処分で良いではないかと考えるかもしれない。

しかし、刑務所に入れることが社会を平和にするわけではないという視点は、強く意識してもらいたい。刑事施設側の更生に向けた努力を否定はしないが、その間、社会から隔絶されてしまうことによる弊害も必ず生じ、外に出てきてからも居場所を失い、そのような中で再び、同じ刑務所に入った者たち、あるいは犯罪の過去があっても許容される者たちと共に再犯が実行されることも多い。

せっかく、今回起きた出来事をうけて再度犯罪組織から話して動こうとする家族や周囲の環境があっても、それを十分に活かした裁判手続や結論をとれない場合がある。

一方で、たとえば大麻といった薬物の横行は、昨今大きな社会問題であるが、単純な所持や使用などは、法定刑上は刑が重くなく、いきなり実刑を出すことは基本的にできない。

そのため、1回限り短時間のおざなりな刑事裁判をもって刑事手続が終了してしまい、初犯の際に行っておくべき環境調整が不十分であることも多い。少年事件の場合、本人の行為に対する理解の浅さや、そのような周辺環境の悪さは選択肢として少年院を検討する強い要素になる。

ここをおざなりにすると、1回目だからと軽視できない結果が示唆されることもあり、少なくとも少年審判において本人や保護者に対し、裁判官から厳しい自覚を求めるやりとりがされたり、試験観察といった手続期間を延長する形で、容易に手続を終えずに経過観察が行われることもある。

私は、現状の成人の事件における定式的な裁判に疑問を抱く。無知で軽率、短慮な人間が、安易な気持ちでかかわってしまった組織において、与えられた仕事に関与するという従的な犯罪の経緯において、本人のコントロール可能な部分(=再犯防止に役立つ部分)は同じなのに、かかわってしまった犯罪のカテゴリによって、個別の家庭や周辺のリソースを中心に議論せずに、ただ法が定めたカテゴリとしての罪の軽重を論じる。

これが、犯罪を抑止し、社会から犯罪を減らす役割として有効なのだろうか。結論の部分で重いとは言えないかもしれないが、プロセスの部分でより負荷がかけられる少年事件の方が、1回の手続としては重く当事者にのしかかり、犯罪抑止に向けて働くこともあるのではないかと思っている。

更生に資する刑事手続が社会の被害を未然に防ぐ

家庭裁判所の看板

成人の事件では、控訴・上告と手続が続き、元々勾留されていない事件ではそのまま勾留されず、勾留されている事件でも都度保釈の機会がある。一方で、少年事件では、抗告という裁判の結論を争う手続は存在するが、最初の家庭裁判所で結論が出てしまった時点で、少年院での処遇は始まってしまう。一度結論が出てしまうと簡単に後戻りできない緊張感も、少年審判の方が強いかもしれない。

日本が人権を前提として刑事司法を運用する限り大半の犯罪者は遠からず社会に帰ってくる。嫌なものを永久に排除しておくことはできない。人々が犯罪におびえ不安を口にするのは理解できるが、その不安を減らすには、犯罪が再生産されないような手続を踏むしかない。

そして、そのためには1個1個の事件を通して当事者の理解促進をすることは欠かせない。「捜査段階において示談で終えられないこと」「審判において生活環境なども掘り下げられやすいこと」「基本的に家庭裁判所の1回勝負になって緊張感も高いこと」など、少年事件のプロセスが決して甘くないことから生じる効果を過小評価せず、同時に刑罰による効果を過大評価しないようにしたい。

処分結果だけでなく、そこに至る過程そのものの持つ意義について、より深い理解が進むことを願う。

杉山大介弁護士

投稿者プロフィール

ベルギー育ち。
漫画『家栽の人』とドラマ『ビギナー』をきっかけに弁護士を志す。
好きな分野・得意な分野は刑事弁護、特に少年事件。
「法律は統治のためのルールであり、正しさを教えてくれない」がモットー。

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