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リーゼント刑事が語る特殊詐欺の進化。闇バイトが生んだ“トクリュウ”と現代の犯罪手口
- 2025/11/26
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- 匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ), 日本, 特殊詐欺, 闇バイト
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おはようさん。リーゼント刑事こと秋山です。
前回「特殊詐欺の歴史」前編として「闇金」が特殊詐欺の原点であり、その後「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」へと移行したところまで書かせていただきました。
私は警察官として、42年間、全国の人々の暮らしを守る使命に生き、定年退職の日まで職務を果たしました。定年退職を迎えた今もその志は変わらず、世の中から犯罪がなくなり、平和の日本、日本人が少しでも幸せに暮らせる世の中になって欲しいと心から願い、職務で培った経験を活かし、みなさんに出来るだけわかりやすくお伝えしていきたいと思っております。
今回お伝えする「特殊詐欺」は、私が知る限り最も陰湿で、巧妙な犯罪です。気づかぬうちにみなさんも関わってしまう危険性があります。是非知識を身に着つけ、知識を武器に、犯罪情報を正しく理解し、犯罪に巻き込まれないよう気をつけてください。
<目次>
巧妙化する特殊詐欺と「匿流」の誕生

「特殊詐欺」とは簡単に説明すると、巧みな言葉や手口で相手を騙し、金銭などを奪う詐欺です。前回お伝えした「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」も「特殊詐欺」に含まれます。そして「特殊詐欺」は大きく10種類に分類されます。
➀オレオレ詐欺
➁預貯金詐欺
➂架空料金請求詐欺
➃融資保証金詐欺
➄還付金詐欺
⑥金融商品詐欺
⑦ギャンブル詐欺
⑧交際あっせん詐欺
⑨その他の特殊詐欺
⑩キャッシュカード詐欺
このように、最初は「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」から始まり、より複雑巧妙化され色々な分野で詐欺が行われるようになりました。
そこで、現れたのが匿名流動型犯罪グループです。通称「匿流(トクリュウ)」。SNSなどでメンバーを募集し、緩やかに結びついて離合集散を繰り返しながら特殊詐欺や強盗などの犯罪を広域的に行う集団です。
従来の暴力団のような強固な組織構造を持ちません。警察にとっては摘発がとても困難で「新たな犯罪組織の形態」として扱われています。
ではどのようにしてグループ化されていったのか?を詳しく説明していきたいと思います。ニュースやSNS等でもよく耳にする「闇バイト」が「匿流」の足掛けになります。
「闇バイト」とは、SNSやインターネット掲示板などで「短時間で高収入」「簡単な作業」「短期OK」など、ぱっと見たところ、法に触れる犯罪行為とわからないようなアルバイト募集要項が掲載されており、目先のお金に目がくらんだ人間(特に若者)が、犯罪に手を染めるアルバイトのことです。
「闇バイトの募集に応募」→「指示される」→結果的に「匿流」として活動させられるパターンです。求人は、一般的なアルバイトの募集に紛れて掲載されていることも少なくなく、「闇バイト」に手を出す若者が後を絶ちません。
“短時間高収入”の罠から始まる特殊詐欺

私が現役時代に逮捕した事例もその典型でした。罪状は「受け子」(被害者から現金やキャッシュカードを受け取る役割)として計6件、総額1800万円を騙し取った詐欺罪(刑法第246条)です。初犯にもかかわらず、懲役4年の判決が下されました。
彼は新型コロナウイルスを機に会社を解雇され無収入になり、SNSで仕事を探しました。「短時間高収入」に興味を持ち応募すると、相手からまず、「テレグラム」に誘導され、身元確認と称し、運転免許証の写真や両親の情報等を提出するよう求めてきました。
※ちなみに「テレグラム」や「シグナル」などの匿名性の高いSNSに誘導されたら、まず詐欺じゃないか?と疑ってください。
その後、すぐに「仕事があります」と告げられ5万円が振り込まれ、スーツを持っていないようならスーツを購入するよう言われました。他社の大手企業の人材募集での広告でも「入社祝い金10万円プレゼント!」などの形で「入社祝い金」を支払われている会社もあることから「ちゃんとした会社だ!」と彼は信じきってしまったようです。
しかし、彼の元に警察官を騙るIDが送られてきました。これは普通の仕事ではない!とこの段階で異変を察し、辞めたい意向を相手に訴えたところ「やらなければ実家を放火するぞ!」と脅され、彼は逃げられないと判断し犯罪に関与することになりました。
翌朝、指定の駅に集合し、向かった先は、すでに掛け子(被害者に電話を掛け、金銭やカードを騙し取る役割)に騙された高齢女性の家でした。キャッシュカードを受け取り、実印を求め、女性が印鑑を取りに行った際、カードを偽物とすり替え、暗証番号まで聞き出す。これこそが特殊詐欺の中の「キャッシュカード詐欺」(窃盗罪・刑法第235条)です。
続いてATMで現金を引き出す指示があり、現場には指示係が待機しており「50万円以下なら咳を1回、それ以上なら咳を2回しろ!」と指示され、合図に合わせて現金を下ろし、現金を手にした後はコインロッカーに預け、ロッカーのQRコード画像を送信。後で別の運搬役が回収する仕組みでした。
“ルフィー事件”が示した闇バイトの恐ろしい実態

「特殊詐欺」に手を出すきっかけのほとんどがSNSで見た「短時間高収入」です。簡単にお金が稼げるという甘い誘いに心が揺らぎ、深く考えずに応募。しかし、その実態は人を騙し、傷つけ、社会を脅かす重大の犯罪ということを沢山の若者が知らずに罪を犯し、共犯者として刑事責任が問われ、前科がつき、長期間の懲役となることが珍しくありません。
まだ世間を知らない若者が、悪い連中に乗せられて、気が付いたら犯罪者になってしまい、夢や未来を奪われ、刑務所に送られる…本当に胸が痛みます。特に窃盗の場合、刑務所を出た後も就職が決まりにくいのです。泥棒を入社させたい会社は本当に少ないです。
また、警察庁生活安全課長も異例の広報を行い、「闇バイト」に応募してしまった場合も相談して欲しい。警察が保護します」と呼びかけました。42年間現場にいた私も、犯人側の保護要請を見たのは初めてでした。もしも心当たりがある方がこれを読んでいましたら、ぜひ警察に相談してください。
そして「特殊詐欺」と聞いて、最近メディアで一番騒がれたのが「ルフィー事件」です。2022年末から2023年初頭にかけて、全国複数地域で、高齢者宅や住宅を狙った凶悪な強盗事件が発生しました。ルフィーグループの犯行は、複数のグループに別れて実行され、「闇バイト」としてSNSや掲示板の募集で集めた若者や、生活貧困者を実行犯として現場に派遣させ強盗や窃盗を繰り返していました。
特に東京都拍江市で起きた事件は今も忘れもしません。当時90歳の女性宅に宅配業者を装って実行犯4名が侵入。女性をバールで何度も殴るなどして死なせ、腕時計3点(計58万円相当)を奪いました。実行犯のリーダーは無期懲役、一緒に実行した若者たちも懲役23年が一審で言い渡されました。
世の中そんなに甘くありません。甘い言葉に騙されないでください。詐欺の手口は年々巧妙化しており、「誘い文句」も絶えずアップデートされています。私に限って…自分は騙されない!と思っている人ほど騙されます。
最後に強盗に入られた場合、どう対処すべきか?をお伝えしたいと思います。
まず、強盗から身を守る対策として重要なのは騒がないこと。今回の東京都拍江市の「ルフィー事件」では、被害者が騒いだために、殺害されるという最悪の結果になりました。
あくまでも犯人の目的は「お金」です。現役時代、強盗犯を捕まえた時、「騒がれたら殺すつもりやった」と供述するケースが多々あり、実際、土下座して命拾いした被害者もいました。
そこで強盗から身を守る対策として2つ目は、「そこにお金はあります。命だけは助けてください」と拝み倒すことです。泥棒も人間です。
次回は、警察官時代に実際に直面した事例を交えながら、子どもや女性が安心して暮らすための防犯対策を詳しくお伝えしたいと思います。
今の時代、基本的に「自分の身は自分で守る」しかありません。知識を武器に、犯罪情勢を正しく理解し身を守ってください。
「特殊詐欺の歴史」前編について知りたい人は下記記事もお読みください。










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