
米動画配信大手ネットフリックスは5日、米メディア大手ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)の主要事業を企業価値ベースで総額720億ドル(約11兆1700億円)で買収すると発表しました。負債を含めた取引額は827億ドルに達し、コンテンツ産業で過去最大級のM&Aとなります。
対象となるのは、映画制作を手がけるスタジオ部門に加え、ドラマ制作で知られる有料ケーブル局「HBO」や動画配信サービス「HBOマックス」などで、ネット配信企業がハリウッドの老舗スタジオをのみ込む構図が鮮明になっています。
ネットフリックスは、世界で3億人規模に達する有料会員基盤と、オリジナル作品を軸にした自社制作力を強みに成長してきました。そこに「ハリー・ポッター」や「バットマン」といった映画シリーズ、「ゲーム・オブ・スローンズ」などHBOの人気ドラマ群が加わることで、配信ラインアップの厚みが一段と増し、加入者拡大や広告収入の底上げが期待されています。
取引条件は、WBDの普通株1株あたり現金23.25ドルとネットフリックス株約4.5ドル相当を組み合わせる形で、WBD株主にとっては発表前日(4日)終値から大きなプレミアムが上乗せされる水準とされています。
ワーナーは創業100年を超えるハリウッドを代表するメジャースタジオで、2025年の全米興行収入ランキングでは首位に立つ一方、テレビ部門の成長鈍化や制作コストの増大から収益が悪化していました。2024年12月期決算では、のれん減損処理などもあり、100億ドル規模の最終赤字に膨らんでいました。
2022年に旧ワーナーメディアとディスカバリーが統合して誕生したWBDは、大型買収の負担も重く、財務体質の悪化が続いており、直近では事業のスピンオフや売却を含む再編案を模索していました。こうした中で行われた入札では、米メディア大手パラマウント・スカイダンスやコムキャストも取得を打診していたものの、潤沢なキャッシュと高い提示額を示したネットフリックスが最終的に合意を勝ち取ったと報じられています。
規制当局の厳格審査へ、独占禁止法とトランプ政権の政治的側面
今回の買収は、米司法省などによる独占禁止法上の審査を経て、今後1年から1年半程度での完了が見込まれています。
取引が成立すれば、両社の動画配信サービスを合算した市場シェアは3割前後に達するとみられ、ストリーミング市場での寡占化や、コンテンツ制作・流通における支配力強化が、独占禁止法上の最大の懸念材料となっています。米議会や専門家の間で警戒の声が高まっており、民主党の有力議員らは、月額料金の値上げや作品の選択肢縮小、雇用への悪影響を理由に、司法省に対して「悪夢のような取引」として厳格な審査を求めています。共和党側からも慎重論が出ています。
一方、トランプ政権は、リベラル寄りとされるメディア企業やIT大手との関係が常に政治的な緊張をはらんでおり、ネットフリックスの企業文化への不信感や、競合メディア企業のロビー活動が審査に影響する可能性も指摘されています。
過去にはAT&Tによるタイム・ワーナー買収の際、司法省が訴訟を通じて統合差し止めを求めた前例があり、今回もパラマウント陣営が裁判所への差し止め請求に動くとの観測が出ています。契約では、当局の反対などで取引が破談となった場合、ネットフリックスがWBD側に多額の契約解除料を支払う条項も盛り込まれており、規制リスクは経営戦略上の大きな賭けとなっています。












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