日産自動車・鴻海(ホンハイ)がEV事業で提携検討 追浜工場存続に向けた新戦略

経営再建を進める日産自動車が、台湾の電子機器製造大手である鴻海(ホンハイ)精密工業との戦略的パートナーシップ構築に向けた交渉を始めたことが明らかになりました。

両社の協議は、日産自動車が統廃合候補として挙げている神奈川県横須賀市の追浜工場を軸とした電気自動車(EV)製造での連携を中心としています。

追浜工場は1961年の開設以来、日産自動車の中核製造拠点として機能してきましたが、現在は深刻な経営課題に直面しています。年間生産能力24万台に対し、2024年の稼働率はわずか40%程度にとどまり、採算ラインとされる80%を大幅に下回る状況が続いています。

2024年10月末時点で約3,900名の従業員を抱える同工場の将来性への懸念が高まる中、地元自治体からも存続を求める声が上がっていました。

日産自動車は5月に発表した経営再建計画において、世界17ヶ所の完成車工場を10ヶ所に集約する方針を示しています。国内では、追浜工場と日産車体湘南工場が整理対象として検討されています。

製造業界の新たな協業モデルへ 鴻海は自社EV製造を強化

提携が実現した場合、鴻海は追浜工場において自社ブランドのEV製造を行う計画です。同社はスマートフォンの受託製造で培った技術力を活用し、2019年からEV事業への本格参入を表明しており、日本国内での製造拠点確保を模索していました。

日産自動車にとっては遊休生産ラインの有効活用により、稼働率向上と固定費削減を実現できる利点があります。

追浜工場の170ヘクタールという広大な敷地には、衝突実験施設やテストコース、研究開発拠点、専用埠頭など包括的なインフラが整備されています。協業においても、これらの研究開発機能は日産自動車が継続して使用する見込みです。

鴻海は海外市場でドイツZF社との合弁事業など、戦略的提携を通じたEV事業拡大を進めています。日産自動車との協業でも合弁会社設立が検討されています。

既に三菱自動車へのEV供給覚書を締結しており、追浜工場を拠点とすることで日本市場での事業基盤強化を図る構想です。

今回の提携により、日産自動車は工場閉鎖に伴う大規模な人員整理や設備処分費用を回避でき、周辺の部品サプライチェーン維持にも貢献できると期待されています。

関連記事

コメントは利用できません。

最近のおすすめ記事

  1. 将来の年金は本当にもらえるのか?膨張する社会保障費と世代間格差の実態
    日本の国家予算における社会保障関係費の割合は、1970年代の約5%から現在は25%へと急拡大していま…
  2. 【2025年版】 経鼻弱毒生 インフルエンザワクチン 2年目は?
    2024年話題になった鼻から接種するインフルエンザワクチン『フルミスト』。2024年に日本で初めて承…
  3. 米アマゾン・ドット・コムは28日、世界の管理部門を中心に約1万4000人の従業員を削減すると発表しま…

おすすめ記事

  1. 網走刑務所で刑務作業を行う受刑者

    2025-7-21

    網走刑務所とはどんな場所?現役職員に聞いた歴史と受刑者の今

    強固な警備体制や凶悪事件の受刑者が収容されるイメージもある網走刑務所。映画やドラマなどの影響で、怖い…
  2. 2023年12月9、10日に開催された全国矯正展の会場(東京国際フォーラム)の入口

    2024-1-22

    日本最大規模の刑務所イベント、全国矯正展とは?刑務作業を通じて届ける矯正行政の今

    2023年12月9日(土)・12月10日(日)の2日間にわたり、東京国際フォーラムにて「全国矯正展」…
  3. 「【論文紹介】 無痛分娩と オキシトシンの 使用による 児の自閉症リスク上昇 との関連」ライター:秋谷進(東京西徳洲会病院小児医療センター)

    2024-10-27

    【論文紹介】無痛分娩(分娩時の硬膜外麻酔による鎮痛)とオキシトシン(陣痛促進剤)の使用による児の自閉症リスク上昇との関連

    今回は、分娩時の硬膜外麻酔による無痛分娩で生まれた子どもが自閉症スペクトラム障害(ASD:Autis…

2025年度矯正展まとめ

2024年に開催された全国矯正展の様子

【終了】コンテスト

ライティングコンテスト企画2025年9-10月(大阪・関西万博 第4回)募集|東京報道新聞

【結果】コンテスト

【結果発表】ライティングコンテスト企画2025年7-8月(大阪・関西万博 第3回)

アーカイブ

ページ上部へ戻る