「ダメ、絶対!」元千葉県警刑事の森雅人氏が高校生向けに薬物の危険性について講義を実施

「薬物乱用防止教室」の講義で講師をする元千葉県警・警部補、一般社団法人日本刑事技術協会の上級コンサルタントの森雅人氏

「薬物乱用防止教室」と題された今回の講義では、元千葉県警・警部補であり、現在は一般社団法人日本刑事技術協会の上級コンサルタントとして活躍する森雅人氏が講師を務めました。今回の講義は薬物使用の危険性と対策について、高校1年生に向けて話されました。

高校生にもなると行動範囲が広がり、SNSを通じてさまざまな人と出会う機会が増えてきます。その日常のちょっとしたシーンの中に、薬物使用の可能性が潜んでいます。「薬物の危険性を正しく理解し対策を事前に講じることで、人生を踏み外さないようにしてほしい」と願う森氏の講義をレポートします。

<目次>

薬物乱用の危険性を知る

「薬物乱用防止教室」で高校生に薬物乱用の危険性を話す森雅人氏

「薬物にハマりどうしようもなくなってしまった人をたくさん見てきた。だからこそ、皆さんにはそうなってほしくない」と、講義が始まると森氏は力強く語り始めました。

講義では、ある事件の犯人となった女性の写真が映し出されました。一見おとなしそうな女性ですが、街中で人を刃物で襲うという殺人未遂を起こしました。逮捕された女性は取り調べで何も話さないので犯行動機がわからず、サイバー犯罪の担当をしていた森氏が呼び出されたそうです。

この女性は大麻精神病に陥っており、女性のスマホやパソコン、ウェブ上を調べた結果、「あそこにいる人たちを殺したい」とうめき声をあげる自撮り映像が発見されました。講義では映像ではなく静止画が共有され、瞳孔が完全に開いた女性の姿を目の当たりにし、息を飲むような瞬間でした。

森氏はこの事例をもとに、「人は見かけによらず、良い人そうに見えても悪い人もいることを知っておいてほしい」と、警鐘を鳴らしました。

「大麻は日本で違法ですが、”合法だから大丈夫”という言葉に惑わされてはいけません。薬物に手を出すことは、自分だけでなく周囲にも大きな影響を及ぼします」

生徒たちは、実際の事件をもとにした森氏の生々しい話に熱心に耳を傾けていました。

薬物に手を出さないために大事なこと

「薬物乱用防止教室」で高校生に講義をする森雅人氏

「違法薬物との出会いは、多くの場合、誘われて断れずに手を出してしまうことから始まります。一度薬物に手を出すと、その感覚が忘れられず、再び手を出してしまうことがあります」と、森氏は語ります。

危険なものとわかっていても、関係性が近い人からの誘いで断れなかったり、逃げられなかったり、ほんの好奇心から始めてしまうケースもあるとのこと。

一度でも違法薬物に手を出してしまうと癖になり、薬が徐々に効かなくなることで使用量が増え、依存症になってしまいます。依存症になると、薬物をやめようと思ってもなかなか離れられなくなります。

薬物使用で何度も逮捕されている人は、本気で辞めようと思っていても、薬物を利用したときの感覚を覚えてしまっているから、意思に反してまた手を出してしまうようです。

「違法薬物から身を守るためには、自分を大切に思ってくれる人たちを心に留め、大切にすることが重要です。大切な人々やもの、そして自分自身を失わないようにする意識を持つことが、薬物乱用を避ける鍵です」

「薬物乱用防止教室」で高校生の質問に回答する森雅人氏

国からも注意が促されている”断る勇気”以上に、
“逃げる勇気”を持つことが肝心だと森氏は強調します。

「どうしても断れない相手がいると思いますが、断ろうと努力する前に危険な誘いや人からは逃げてください。犯罪の被害に遭わないためにも恥じることはありません」

薬物使用の疑いがある友人との関わりについて、生徒からあがった質問に対して、「できれば縁を切らず、その人にとって頼れる存在になってほしい」と森氏は回答しました。

違法薬物をやっている人は、孤立して相談できる人がいなくなり、薬物仲間といる時間が増え、結果的に薬物に依存し、負のスパイラルに入ってしまうといいます。

違法薬物を断てるようサポートをすることが望ましいですが、違法薬物に誘われたり、困ったときは近くの大人に相談することを推奨しています。相談しにくい場合は、匿名で相談できる窓口を活用することも重要です。

最後に

「薬物乱用防止教室」で刑事時代の話をする元千葉県警警部補の森雅人氏

森氏の講義は学びがあるうえ、元刑事としてのユニークな話も相まって高校生も興味を持って受講していました。

森氏は、学生時代に受けた薬物乱用に関する講義が硬い印象を受けたことから、自身の講義ではそれを払拭したいという想いを持っています。元々テーマパークの演者として働いていた経験から、お客さんを楽しませる話し方が講義に反映されているようです。

講義を聞いたある教師は「普段ニュースで見る犯罪の原因のひとつに薬物乱用があるということはとても印象深く、生徒の心にも残ったと思います。何かあったときに今日のことを思い出して、巻き込まれないようにしてほしい」と感想を述べました。

講義を聞いた生徒からは、
「実際に薬物乱用をしてしまった人の写真を見た時に『自分はこうなりたくない』と思いました」
「誘われたら断ることができない性格だと思うので、断るよりも早くその場から逃げるという方法があることを知れた」
「自分を大切にするということを話してくださり、ためになりました」
などの感想がありました。

森氏の講義は、高校生に限らず多くの人に聞いてもらいたい内容でした。自分を大切にし、人生を歩む上での重要な教訓を提供するものであり、その想いが伝わる講義となりました。

森雅人氏
https://j-keiji.org/teacher/masato-mori/

関連記事

コメントは利用できません。

最近のおすすめ記事

  1. 改正プロバイダー責任制限法が5月10日の参院本会議で可決され、成立しました。この改正法により、SNS…
  2. 令和6年の能登半島地震により、石川県の施設は甚大な被害を受けた。その復興の道のりのなかで、『のとじ…
  3. JR東日本は、新たなデジタル金融サービス「JRE BANK(JREバンク)」を5月9日に開始すると発…

おすすめ記事

  1. 青森刑務所で受刑者に講話を行った受刑者等専用の求人誌「Chance!!」編集長・三宅晶子氏

    2024-2-6

    受刑者等専用の求人誌「Chance!!」編集長・三宅晶子氏が青森刑務所で受刑者へ伝えた想い

    三宅晶子氏(株式会社ヒューマン・コメディの代表取締役)は、日本初の受刑者等専用求人誌「Chance!…
  2. 上空から見た羽田空港(空撮)

    2024-4-15

    羽田空港の航空保安施設が支える快適な空の旅。安全運航の裏側にせまる

    日本と世界を結ぶ玄関口である羽田空港。今回は、航空機を安全に飛ばすために必要な様々な施設の中から、対…
  3. ゴミ収集車の死亡事故による呼び捨てでの実名報道で訴訟を起こした品野隆史氏

    2024-3-29

    メディアが市民にくだす判決に異議あり!呼び捨ての実名報道に抗った男性の壮絶な戦い

    現在メディアでは、事件に関して疑いのある人の実名報道では「容疑者」を呼称でつけていますが、1989年…

【募集中】コンテスト

第5回ライティングコンテスト(東京報道新聞)

【結果】コンテスト

東京報道新聞第4回ライティングコンテスト (結果発表)

インタビュー

  1. ゴミ収集車の死亡事故による呼び捨てでの実名報道で訴訟を起こした品野隆史氏
    現在メディアでは、事件に関して疑いのある人の実名報道では「容疑者」を呼称でつけていますが、1989年…
  2. 青森県で協力雇用主として出所者の社会復帰を目指して雇用する企業「有限会社松竹梅造園」代表の渡辺精一様
    協力雇用主とは、犯罪や非行をした者の自立や社会復帰に向けて事情を理解したうえで就職先として受け入れる…
  3. 青森刑務所で受刑者に講話を行った受刑者等専用の求人誌「Chance!!」編集長・三宅晶子氏
    三宅晶子氏(株式会社ヒューマン・コメディの代表取締役)は、日本初の受刑者等専用求人誌「Chance!…
ページ上部へ戻る