子どもの8%が”香害”で体調不良 – 人工的な香りによる健康被害が深刻化

子どもの8%が"香害"で体調不良 - 人工的な香りによる健康被害が深刻化

中学生以下の子ども1万人のうちおよそ8%が、生活用品の人工的な香りで体調不良になる「香害」を経験したことがあることが、国内の学術団体による調査で明らかになりました。この調査結果は9月20日にNHKが報道し、子どもたちの学習環境に深刻な影響を与える新たな健康問題として社会の注目を集めています。

調査は日本臨床環境医学会の環境過敏症分科会と室内環境学会の関連分科会が2024年5月から2025年1月にかけて実施されました。北海道、新潟、兵庫など9都道府県の21自治体に協力を得て、小中学生約8,000人と幼稚園や保育所の未就学児約2,000人の計1万人を対象にインターネットによる保護者向けアンケートを行った結果、全体の8.3%が柔軟剤などの香料で体調不良を経験していることが判明しました。

特に小中学生に限定すると、その割合は10.1%と1割を超えており、年齢が上がるほど経験率も高くなる傾向が見られます。未就学児では2.1%、小学生では8.9%、中学生では12.9%と、学校生活を送る年代で被害が深刻化していることが分かります。

具体的な症状としては、頭痛、吐き気、腹痛、関節痛などが報告されており、体調不良を経験した場所についての質問では「園や学校」という回答が最も多く、香りが原因で登園や登校を避けるケースもあることが明らかになりました。

この問題を受けて、「香害をなくす連絡会」と超党派の地方議員による「香害をなくす議員の会」が文部科学省に要望書を提出し、学校での被害防止に向けた啓発活動の強化や全国的な実態調査の実施を求めています。今回の調査に参加した明治大学の寺田良一名誉教授は「香害で学習環境が損なわれている」と指摘し、教育現場における迅速な対策の必要性を強調しています。

香害の原因となる香料のほとんどは石油から合成された人工香料で、発がん性や環境ホルモン作用、アレルギー誘発作用などの毒性が疑われる物質も多数含まれていますが、日本では製品への表示義務がありません。また、香りが長続きする製品に使用されているマイクロカプセル技術についても、プラスチックの微粒子を吸引してしまう可能性があり、人体への影響が懸念されています。

学校現場での深刻な実態 – 不登校につながるケースも

実際の学校現場では、香害により学習に大きな支障をきたす子どもたちが増加しています。小学校に通えなくなった兄妹の事例では、同級生の服の柔軟剤や合成洗剤の匂いで体調が悪くなり、最終的に在宅でのZoom授業を受けることになったケースが報告されています。しかし、Zoom授業では体育や音楽などの参加が困難で、長時間の視聴で疲労がたまりやすいなど、通常の学校生活と比べて大きな制約があります。

また、化学物質過敏症を発症した京都、大阪、和歌山、愛知の子どもたちの保護者が結成した「化学物質過敏症の子ども達の幸せを願う会」は、校内で最も影響が少ない校庭でテストを受けざるを得ない状況や、修学旅行に参加できない実態があることを文部科学省に報告しています。子どもたちからは「みんなと一緒に勉強したい」「同じような経験をする人がいなくなってほしい」という切実な声が上がっています。

学校側の対応状況については、化学物質過敏症の児童生徒に対する支援として、特別教室の設置や周囲への香料自粛依頼、退避時間・空間の確保、アルコール消毒をしないことへの配慮などが行われている事例もありますが、まだ十分な対策が整っているとは言えない状況です。文部科学省では学校保健安全法において学校環境衛生基準を定め、化学物質による健康障害に関するマニュアルも作成していますが、被害者数の調査は行われておらず、対策が事実上、教育委員会や学校に任されているのが実情です。

今回の調査結果により、香害が個人的な問題ではなく、社会全体で取り組むべき教育環境の課題であることが明確になったことで、今後は国レベルでの更なる対策強化が求められています。

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