睡眠中の赤ちゃんの命を守れ!乳幼児突然死症候群とは?

「睡眠中の赤ちゃんの命を守れ! 乳幼児突然死症候群とは?」ライター:秋谷進(東京西徳洲会病院小児医療センター)

大切なわが子を乳幼児突然死症候群から守るために

突然ある日、自分の大切なわが子が息を引き取っている・・・
しかも、原因もわからず眠っている間にひっそりと・・・
想像するだけで、いたたまれない気持ちになりますよね。

そんな疾患があるのか?

実際にあるのです。

それこそが「乳幼児突然死症候群」といいます。
実は、乳幼児突然死症候群で毎年約70人の大切な幼い命がなくなっています。

どうして乳幼児突然死症候群が起こるのか?
乳幼児突然死症候群を防ぐためにはどうすればよいのか?

最新の論文から解説していきます。

乳幼児突然死症候群とは?

乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)とは、それまで元気だった赤ちゃんが、事故や窒息ではなく、眠っている間に突然亡くなってしまう疾患のこと。

乳幼児突然死症候群の原因はまだはっきりわかっていません。
それにも関わらず、年々減少しているとはいえ、年間70人の命が失われており、乳幼児の死因として第3位にあげられています1)(表1)。

第1位第2位第3位
0歳先天奇形等 490人呼吸障害等 211人乳幼児突然死症候群 68人
1-4歳先天奇形等 98人悪性新生物(腫瘍)52人不慮の事故 50人
総数悪性新生物(腫瘍)381,497人心疾患 214,623人老衰 152,024人
表1.死亡数1)

しかし、数多くの研究により、乳幼児突然死症候群を予防する手だてがいくつか試みられています。
今回は数ある論文の中で、小児科雑誌として非常に有名な「Pediatrics」2)の報告を取り上げます。 

最新の論文からわかった、乳幼児突然死症候群を防ぐ戦略とは?

2023年の最新の論文では、2016 年から 2017 年までの疾病管理予防センターのデータから112例の窒息症例と448例の対照群、300例の原因不明の乳児死亡例と1200例の対照群を比較して分析しています。

分析した中には、

  • もともとの状況:人種、母親の年齢、母親のタバコ、出生前ケア、妊娠期間など
  • 死亡した状況:睡眠位置ややわらかい寝具の使用、睡眠の地面がどんなものであったか、一緒に寝ていたかなど

に至るまで、こと細かく分析されました。

そこでわかったことは以下の通りです。

  • 乳幼児突然死症候群が確認されたケースでは、妊娠中の母親の喫煙していたり、2人以上出産していたり、早産している確率も高かった。

これに関して考えられるのは、もともとの母体や胎盤の状況、母親の喫煙状態なども乳幼児突然死症候群に大きくかかわっていることです。
そして厚生労働省では、これまでに明らかになったデータの積み重ねから、乳幼児突然死症候群のガイドラインとして、「母乳で育てること」と「母親のタバコをやめること」を指摘しています。

さらに、寝る姿勢や寝具と乳幼児突然死症候群の関連性において、

  • 仰臥位で寝かせられなかった乳児は、睡眠関連の窒息になるリスクが1.9倍(95% 信頼区間: 0.9 ~ 4.1倍)、原因不明の乳児死亡のリスクが1.6倍に増加しました(95% 信頼区間: 1.1~2.4倍)
  • 柔らかい寝具を使用すると、柔らかい寝具を使用しない場合と比較して、原因不明の窒息の確率が 16.3倍増加し (95%信頼区間: 5.0~53.3倍)、原因不明の乳児死亡が 5.0倍増加しました (95% 信頼区間: 3.2~8.0倍)
  • ベビーベッド、バシネット、またはポータブルベビーベッドで寝かせられなかった乳児は、ベビーベッドで寝た乳児と比較して、窒息死の可能性が3.9倍になりました(95%信頼区間:1.4〜10.4倍)。

さらに、これらのリスクを超えて、乳幼児突然死症候群のリスクがもっとも高かったのが「母親や乳母と寝室を共有していなかった乳児」です。

なんと、母親と乳児が一緒の部屋で寝ていない場合、睡眠関連の窒息で死亡する可能性が 18.7倍高く (95%信頼区間: 6.8~51.3倍)、原因不明で死亡する可能性がほぼ7.6倍高かった (95%信頼区間: 4.7~12.2倍)ことがわかっています。

では、母親以外でも一緒に寝ていればよいのかというとそういうわけではありません。

他の人や動物と寝床を共有した乳児でも、原因不明の乳児死亡のリスクが2.1倍に上昇していたのです(95%信頼区間: 1.4〜3.2倍)。やはり乳児を一番に気にかけてくれる「母親」の存在がもっとも大切なのですね。

これらをまとめたチェックリストにしてみました。

お母さんと一緒の部屋で寝かせる
ベビーベッドで寝かせる
柔らかい寝具にしない
できれば母乳で育てる
保護者等は喫煙しない
1歳までは仰向けに寝かせる
表2.乳幼児突然死症候群を予防するチェックリスト
(下から3項目は厚生労働省から3つのポイントとされています)

まとめ~普段の心がけが乳幼児突然死症候群を防ぐ~

このように考えると、乳幼児突然症候群の原因ははっきりわかっていないものの、

  • 赤ちゃんを迎える準備をきちんとしてあげる
  • 赤ちゃんが安心して寝られる環境をととのえてあげる

ことで、リスクを大きく下げる事ができるといえます。

さらに一番大切なのは

  • 赤ちゃんと一緒の空間でお母さんが寝てあげる

こと。

夜泣きなどもあり、すごく大変ですよね。
とてもよくわかります。

しかし、お母さんが頑張った分、目に見えていないかもしれないですが、赤ちゃんは「安心して」眠ることができるのです。

乳幼児突然死症候群。
原因もはっきりしていないし、とても怖い病気です。
だからこそ、自分たちができるケアと愛情を、赤ちゃんに注いであげてください。

参考文献:
1.厚生労働省 .2021年 人口動態統計
2.Sharyn E Parks,Carla L DeSisto,Katherine Kortsmit,et.al. Risk Factors for Suffocation and Unexplained Causes of Infant Deaths. Pediatrics 2023;151: e2022057771
3.厚生労働省.「11月は「乳幼児突然死症候群(SIDS)」の対策強化月間です~睡眠中の赤ちゃんの死亡を減らしましょう~
4.厚生労働省.「乳幼児突然死症候群(SIDS)について」

秋谷進医師

投稿者プロフィール

東京西徳洲会病院小児医療センター

1992年、桐蔭学園高等学校卒業。1999年、金沢医科大学卒。

金沢医科大学研修医、2001年、国立小児病院小児神経科、2004年6月、獨協医科大学越谷病院小児科、2016年、児玉中央クリニック児童精神科、三愛会総合病院小児科を経て、2020年5月から現職。
専門は小児神経学、児童精神科学。

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