
上場からわずか半年で民事再生に追い込まれた人工知能開発企業オルツの粉飾決算事件が、刑事事件として本格捜査段階に入りました。
東京地検特捜部は9日、創業者で元社長の米倉千貴容疑者(48)と後任代表だった日置友輔容疑者(34)ら計4名を金融商品取引法違反容疑で逮捕しています。
外部委員会の調査結果によれば、同社は架空の商取引を循環させる手法で約119億円規模の虚偽売上を作り出していました。
具体的には、2022年1月から2024年6月までの期間で約84億円、さらに2024年12月期決算では約49億円の水増しを行い、それぞれ関東財務局に虚偽の財務書類を提出した疑いが持たれています。
同社は昨年10月にグロース市場でデビューを飾りましたが、今年4月に不正疑惑が浮上すると事態は急展開しました。7月の調査報告書公表後に米倉千貴容疑者が経営から退き、8月には裁判所が再生手続き開始を決定、上場資格も失いました。
証券取引等監視委員会が4月から並行調査を実施しており、特捜部も関係者への聴取を重ねて立件準備を進めていました。容疑者らの認否は現時点で公表されていません。
米倉千貴容疑者の経歴:哲学からAI開発への異色の転身
米倉千貴容疑者は1978年生まれで、京都大学文学部哲学科を卒業した異色の経歴を持つ人物です。理系バックグラウンドではなく、人間の意識や自己の定義といった抽象的な問いに取り組む哲学分野で学びを深めました。
卒業後は即座に起業の道を選ばず、出版社で編集職に就きました。紙媒体のコンテンツ制作現場で情報伝達の本質や言語活動について深く考察し、この経験が後の自然言語処理技術開発の基盤となります。
2000年代後半、スマートフォン普及と電子書籍黎明期という変革期に独立を決断しました。電子書籍配信関連企業を設立し、デジタルコンテンツ流通のソリューション開発に従事します。当時は国内にAmazon Kindleも未上陸で、まさに新興市場への挑戦でした。
2014年に株式会社オルツを設立。「パーソナル人工知能による個の拡張と継承」という独自のビジョンを掲げます。
個人の発言・行動パターンを学習して本人の分身として機能するP.A.I技術の開発を核とし、個人情報の所有権と制御に関する新しい概念を提唱しました。









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