
東京都港区の職員らが、成年後見制度に関する診断書を不正に改ざんした疑いで、警視庁と東京地検に刑事告発されました。告発に踏み切ったのは、当事者である90代男性の娘の戸田洋子氏(仮名)です。
きっかけは、2022年5月に港区から届いた一通の郵便でした。「父親の判断能力が低下しているため成年後見人の選任が必要だ」と記されており、既に入院させたとも告げられました。
しかし、肝心の入院先については明らかにされず、父親の居場所が判明するまでに、実に4ヶ月もの歳月を要したといいます。裁判で父親の認知機能が成年後見人を必要とするほど衰えていないことが認められ、ようやく不当な申し立ては退けられました。
しかし、問題はそれだけではありませんでした。告発状によれば、医師が「保佐」相当と診断した書類を、港区の職員らが「後見」相当に改ざんした疑いがあるというのです。「後見」と判断されれば、成年後見人は本人に代わってあらゆる法律行為が可能になります。港区側は、男性名義のマンションの売却すら計画していたといわれています。
担当の弁護士は、これを「社会から事実上抹殺しようと図ったことに起因する、誠に深刻かつ悪質な事案」と一刀両断しました。木谷明弁護士が準備を進めていた告発状は、同氏の急逝により釜田雄介弁護士へと託されることになりました。
ネット上では、「普通はありえない事件」「俄には信じがたいような内容ですが、事実であればとんでもない犯罪です」「国会で議論されるくらいの事案だと思います」などの意見が寄せられています。
ほとんどの医師が「軽度認知障害」や「保佐相当」との見解を示す
事態を知った本人と戸田洋子氏は、複数の認知症専門医に改めて診断を依頼しました。その結果、ほとんどの医師が「軽度認知障害」や「保佐相当」との見解を示し、区役所の主張する「後見」の必要性は否定されました。
当初の診断書を作成した医師は、内容の改ざんを否定しています。別の医師も、新たな情報を得て鑑定の修正に応じるなど、区役所の不正は明らかになりつつあります。
告発を受けて、警察や検察による捜査が始まれば、この種の悪質な行為を根絶するきっかけになるかもしれません。認知症の診断に携わる医療関係者には、診断書の不正な改変が患者を苦しめる事態を防ぐため、細心の注意を払うことが求められています。