
米メディア大手ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)は21日、全社の売却を含む戦略的選択肢を検討すると発表しました。同社はこれまで事業を2社に分割して再建を進める方針を示していましたが、複数の企業から買収提案を受けたことを受け、方針を柔軟化する形です。
WBDは現在、動画配信や映画を担う事業と、ケーブルテレビを中心とした事業の2社に分割する準備を進めています。成長が鈍化するテレビ事業を切り離し、収益構造を見直す狙いがありますが、買収への関心が高まる中で全体売却の可能性も浮上しました。
買収提案の中には、米メディア大手パラマウント・スカイダンスによるものが含まれています。同社は8月にパラマウント・グローバルとスカイダンス・メディアが合併して誕生した企業で、オラクル共同創業者ラリー・エリソン氏の息子、デービッド・エリソン氏がCEOを務めています。
米紙報道によると、パラマウント・スカイダンスはすでに2度目の買収提案を行っており、全社買収を視野に入れているとされます。一方、コムキャストやネットフリックスもWBDの一部事業や知的財産(IP)の取得を検討している模様です。
WBDのデビッド・ザスラフCEOは声明で「分割は最善の策だと信じてきたが、株主価値を最大化するために全ての選択肢を検討する」と述べ、経営再建に向けた姿勢を示しました。報道を受けて21日のWBD株は前日比11%高で取引を終えています。
米メディア再編の動き加速か
WBDは2022年4月にワーナーメディアとディスカバリーが合併して誕生しました。巨大コンテンツ企業としてネットフリックスなどの配信大手に対抗する構想でしたが、買収費用の増大と配信事業の採算難から財務状況が悪化し、負債は約350億ドル(約5.3兆円)に達しています。
米国では「コードカッティング」と呼ばれる有料テレビ離れが進み、ストリーミング中心の視聴文化が定着しました。こうした中、伝統的テレビ事業の価値が急速に低下し、WBDは24年8月に放送事業で91億ドルの減損損失を計上しました。
業績不振が続く大手メディアの動揺は業界再編の引き金になりつつあります。トランプ政権が同業界の大型合併に比較的寛容な姿勢を取るとの見方も、買収交渉を後押ししているとみられます。メディア市場の構造変化の中で、WBDの動向は業界再編の試金石となりそうです。










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