退職代行大手「モームリ」に警視庁が家宅捜索 弁護士紹介で報酬受領か

警視庁は22日、退職代行サービス大手「モームリ」を展開する株式会社アルバトロス(東京都品川区)の本社と代表者宅、複数の提携法律事務所に対し、弁護士法違反の疑いで強制捜査を実施しました。

捜査当局の説明によれば、同社は退職希望者を法律専門家に誘導し、その見返りとして金銭を受け取っていた疑いが持たれています。

問題となっているのは、利用者に弁護士を紹介する対価として報酬を得る行為です。これは弁護士法で禁止される「非弁提携」に該当する可能性があります。

仮に紹介手数料として料金に上乗せされていた場合、利用者が本来必要な金額より高額な費用を支払わされていたことになります。

さらに深刻なのは、法的知識を持たない事業者が実質的に交渉業務を行っていた場合の影響です。専門家の関与なしに進められた手続きにより、利用者が不利な条件で退職せざるを得なくなるケースや、本来受け取れるはずの退職金や有給消化などの権利を放棄してしまうリスクが指摘されています。

こうした不備によって生じた損害について、事業者側に責任を問うことが困難になる懸念もあります。

一部報道では以前からこうした疑惑が取り沙汰されており、同社のWebサイトでは「退職に交渉は不要で、意思表示のみを代行しているため違法性はない」との見解が示されていました。しかし、当局は別の角度から法律違反の可能性を捉え、今回の強制捜査に踏み切った形です。

年間2万件超の実績誇る業界最大手 多彩なサービスを展開

モームリは退職代行業界で突出した存在感を示してきました。公式発表では、累計4万件以上の退職実現という圧倒的な実績を掲げ、年間では2万件を超える案件を処理しているとされます。これは業界内で群を抜いた数字です。

サービスの特徴は多岐にわたります。基本料金は1万2,000円からと業界平均の半額以下に設定され、後払い制度も用意することで手持ち資金がない利用者でも即座に申し込める仕組みを構築していました。

365日24時間の受付体制を敷き、電話・メール・LINEなど複数の連絡手段に対応し、即日での代行実行も可能としていました。

さらにサービス利用後1年間は半額で再利用できる制度や、女性スタッフによる相談対応、対面・オンラインでの面談オプションなど、きめ細かな配慮を打ち出しています。

退職後の支援も充実させており、大手企業を含む多数の事業者と提携することで、住居探しから引越し、クリーニング、医療機関受診、技能習得支援まで、幅広い分野で優遇価格のサポートを提供していたとされます。

こうした総合的なサービス展開が利用者獲得に繋がり、インターネット上の口コミでも高評価を集めていました。今回の捜査により、急成長を遂げた退職代行ビジネスの実態解明が進むことになります。

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