
大手証券会社や信託銀行が連携し、上場企業の株式を24時間1円単位で取引できるシステムの導入を進めています。株式をデジタル証券として小口化し、2026年にもサービスの提供を始める予定です。業界横断のインフラ整備により、投資家の裾野を広げ、「貯蓄から投資へ」という流れを加速させる狙いがあります。
現在の株式取引は証券会社ごとに異なり、投資金額が100円単位や1株単位であったり、深夜は注文を受け付けていなかったりするという課題を抱えていました。今回の新たな仕組みでは、最低投資金額が1円からとなり、24時間いつでも注文・決済ができるようになります。
11月中に取引システムの開発・導入に向けた協議会が立ち上げられ、三菱UFJ信託銀行の子会社であるProgmatが事務局を務めます。SBI証券などの証券会社、SBIグループなどが出資する大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)、信託銀行や法律事務所が参加する予定です。
同意が得られた企業の株式は1円単位で売買できるデジタル証券に変換されます。信託銀行が企業の株式を、「株式トークン」と呼ぶ株式にひも付いたデジタル証券に1円単位で分割する仕組みです。このデジタル化された株式トークンは、ブロックチェーン(分散型台帳)上で24時間取引できるようにされます。
既存の取引所を介さずに株式を売買する私設取引システム(PTS)として運用されるため、投資家は証券会社経由で売買することになります。株式トークンにひも付いた上場企業の株価が変動すれば、株式トークンの価格も同じように変動するよう設計されています。
日本では2020年の改正金融商品取引法により、金融機関がデジタル証券を取り扱えるようになりました。すでに不動産や社債を裏付けとした小口の投資商品も存在しています。株式トークンの売却益や配当には、一般の株式と同様に税率20%が課税される仕組みです。
国際競争の観点から必要とされる市場整備
株式の小口取引環境の整備が海外に比べて遅れていることが、今回のシステム導入の背景にあります。東京証券取引所によると、3月末時点での東証での平均投資単位は18万7000円でした。これは米国の3万2000円やドイツの2万3000円などと比べて突出して高い水準です。
米国ではすでに1株未満、1ドル単位での購入が可能な仕組みが浸透しており、ネット証券の米ロビンフッドは6月にエヌビディアやアップルといった主要上場株などにひも付いた株式トークンの取引を開始しています。米証券取引所ナスダックも9月に、上場株式を裏付けとする株式トークンを取引できるように規則を改定する方針を明らかにしました。




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