
更生と共生の輪を広げる矯正展。令和7年度の鹿児島矯正展は、10月18日(土)・19日(日)の2日間にわたり鹿児島刑務所で開催されました。
刑務所作業製品の販売、施設見学ツアー、地域団体によるステージイベントなど、多彩な催しが行われました。受刑者の取り組みを知ることで、再犯防止や地域との共生について考えるきっかけとなるイベントです。今回は、そんな鹿児島矯正展の様子をレポートします。
<目次>
鹿児島刑務所について

鹿児島刑務所は、九州矯正管区に属する刑務所です。藩政時代に島津藩の牢屋として開設された長い歴史を持ち、昭和61年に鹿児島市から湧水町へ移転。時代とともに矯正の役割を担ってきました。定員429名に対し、2025年10月19日時点では359名が収容されています。
収容対象は「20歳以上の男性で、主に刑期が10年未満の受刑者、犯罪傾向が進んでいる受刑者」です。近年は受刑者の数が減り、高齢化が進んでいるのが現状です。
鹿児島刑務所の最大の特徴は、全国でも珍しい農場区が併設されていることです。敷地面積は東京ドーム約24個分にあたる112ヘクタールで、 塀がない「開放的施設」として指定されています。現在11名の受刑者がお茶の栽培を中心とした刑務作業や職業訓練に励んでいます。
鹿児島刑務所で木工、洋裁、農業等の刑務作業を実施しています。特に大自然の中での開放的施設では、11名の受刑者がお茶の栽培などの刑務作業・職業訓練に励んでいます。
令和7年度鹿児島矯正展の概要
鹿児島矯正展のメインイベントは、受刑者が更生を目指して取り組んだ刑務所作業製品の展示と販売です。鹿児島刑務所からは農場区で栽培・製茶されたお茶や、ちゃぶ台などの手作り木工製品を主力に販売。ほかにも、参加施設が持ち寄った製品にはガラス細工製品や革製品も見られ、地域色豊かな刑務所作業製品が並びました。
また広報ブースでは、矯正行政の仕組みや受刑者の生活を紹介するパネル展示のほか、鹿児島少年鑑別所による性格検査も実施。
さらには、今回も恒例の人気イベント「鹿児島刑務所の所内見学ツアー(一部)」も実施され、普段立ち入ることのできない工場や浴室を見学することができました。 そのほか、地元小中学校や鹿児島県警音楽隊による音楽演奏、吉本住みます芸人によるトークや、キッチンカー・地元飲食店の出店といった、地域と連携した多彩なプログラムが展開されました。
開場前からたくさんの来場者がイベントに期待

開場前から庁舎前には多くの来場者が集まり、無料シャトルバスで続々と来場。子ども連れの家族やシニア層まで幅広い層が足を運び、和やかな雰囲気に包まれました。
19日のオープニングでは、吉本住みます芸人のパイナップルつばささんの軽快なトークにより、和やかな雰囲気のなかで鹿児島矯正展がスタート。今年の来場者も例年同様多数にのぼり、県内外から多くの人々が訪れました。

安価で高品質な手工芸品が目白押し
鹿児島矯正展の見どころは、なんといっても「刑務所作業製品」の展示・即売です。九州各地の矯正施設を中心に出店されたブースには、それぞれに地域色ある手工芸品が並んでおり、来場者は思い思いに店を巡りながら気に入った製品を手に取っていました。
鹿児島刑務所からは、手作りの木工製品やバスケット、農場区で生産されたお茶が販売されました。無農薬で栽培され、火入れなどの加工や包装までも一貫して受刑者が手掛けています。今回は高級煎茶、お徳用煎茶、粉末茶が販売されていました。湧水町のふるさと納税でも出品されています。

天然木の風合いを活かし、手触りにこだわってつくられた折りたたみ式のちゃぶ台は、実際に触れてみると、細部にまで気を配った丁寧な仕上がりが感じられました。全国的にも刑務作業として木工を行う刑務所は多いですが、昨今では従来の重厚感のある家具より、コンパクトで現代の暮らしに馴染みやすいデザインの家具を制作することが多いそうです。こちらも湧水町のふるさと納税でおなじみの一品です。

全国各地の刑務所で制作された製品のなかでも特に印象的だったのが、各地の伝統工芸品です。これら工芸品の多くは、受刑者自らがデザインや使い心地を考えて制作されています。また製品が売れると、購入者がどんな人だったのか、また来場者が実際に手に取ったときの感想などが、制作した受刑者へフィードバックとして伝えられるそうです。
看守長の中谷さんは、「刑務所作業製品を通して受刑者が社会とのつながりを感じることで更生へのモチベーションアップとなり、再犯防止につながる」と語っていました。受刑者が、刑務作業を通じて地域性豊かな特産品を守る役割を担っていると知ると、刑務作業の持つ意味がより深く感じられました。
飲食ブースは地元グルメが勢揃い

湧水町役場の協力のもと、会場には地元のキッチンカーやテントがずらりと並びました。湧水町を中心に近隣の市町村からも出店があり、お好み焼きやラーメンといった定番の屋台飯から、たい焼きやプリン等のスイーツまで勢揃い。地域と矯正行政が連携してイベントを盛り上げている様子が伝わってきました。

福永商店からは刑務所のレシピを再現してつくられたプリズンカレーが提供され、大人気でした。カレーは濃厚でありながらもどこか懐かしい味わいで、湧水町幸田で採れたもち麦ごはんは食べ応え十分です。

城山ホテルはパンを販売。スタッフからは地域事業者と矯正施設の地域共生を願う声があがりました。刑務所と地域事業者の共存共栄を目指す鹿児島矯正展らしい光景が広がっていました。
知ることで広がる再犯防止・今年施行の拘禁刑を学ぶ

鍛錬場では少年鑑別所や検察庁といった関係機関の広報ブースが展開され、各機関が取り組む政策についての展示が充実。非行・犯罪の調査から刑務所での改善更生、そして出所後に地域が支えるまでの一連の流れを知ることができ、矯正行政の全体像を分かりやすく学べる内容となっていました。
パネルでは具体的な処遇のあり方が図解入りで分かりやすく解説されており、多くの来場者が足を止める様子も。

体験型のコーナーとして性格検査のブースも設けられていました。実際に少年鑑別所で用いられる心理検査の手法をアレンジしたもので、自分の性格傾向や適性を知ることができます。質問はマークシート形式で、その場で結果が渡されます。

さらには、塗り絵や写真撮影コーナーもあり、子どもと一緒に矯正行政を楽しく学べる工夫が施されていました。鹿児島保護観察所のブースでは「更生ペンギンのホゴちゃん」の塗り絵が子ども達から大人気。
刑務所見学ツアーで塀の向こうの生活を知る
鹿児島矯正展のなかでも、毎回注目を集めるのが刑務所内見学ツアーです。過去の矯正展では開場後あっという間に整理券がなくなってしまうほどの人気ぶりだったそうで、今年度は予定人員より多くの来場者全員が見学できるよう配慮されていました。
刑務所見学では20名ほどの小グループで最大25分間、塀の向こうへの立ち入りが許可されます。この日は刑務作業が行われない日だったので、浴場・工場の計3か所を見学することができました。ちなみにセキュリティの都合上、見学ルートは一部に限定され、撮影器具の持ち込みはできませんでした。
刑務所内では刑務官が随所に配置されており、誘導案内や施設説明等の来場者の対応を担当。見学者の質問にも適宜丁寧に答えてくださり、施設の内見と合わせて受刑者の生活をより深く知ることができました。特に今年は新たに施行された「拘禁刑」についても直接説明があり、制度の目的や今後の運用方針に理解を深める来場者の姿が見られました。
廊下を進むと、最初に見えてきたのは、受刑者の食事展示コーナー。朝・昼・夜3食分のサンプルが並び、主食は麦ごはんを中心に栄養バランスが取れた献立が紹介されていました。
見学1ヶ所目は浴場です。中央にプールのような大きな浴槽が伸びており、まわりに洗い場が複数ある造りで、清潔感のある公衆浴場でした。刑務官によると、受刑者は週に3回、一度に15人がまとまって15分入浴するそうです。
次に案内されたのは、受刑者が作業を行う工場です。広い作業台がいくつか並んでおり、まるで学校の教室のようでした。作業台にはちりとり・小ぼうきがかけられており、工場や作業台を大切に扱っている様子が感じられました。この工場では刑務作業や更生教育に加え、高齢化が進む受刑者へ向けた認知症予防(簡単な体操や折り紙といったレクリエーション)も実施しているとのことです。
最後に案内されたのは工場です。整頓された作業棚と安全標語のポスターが目を引き、工業施設のような印象を受けました。この工場では、薬物使用等で犯罪傾向のすすんでいる受刑者が更生に向けてのワークに取り組むことが多いそうです。実際に更生教育で使用されているワークシートや、受刑者が作業に取り組む様子の写真展示もあり、日々の生活の様子がひしひしと伝わってきました。




鹿児島矯正展が行われている敷地内では、受刑者が生活を送る共同室・単独室のミニチュア模型の展示がありました。定員割れやトラブル防止のため、近年ではほとんどの受刑者が単独室に収容されているそうです。
その他地元密着型のお楽しみ|ステージイベント・自衛隊車両展示・動物譲渡会
会場内のステージでは、湧水町や近隣市町村で活動している団体によるステージ発表が開催。矯正展1日目には鹿児島県警音楽隊や吉松小中学校の楽器演奏、2日目には舘空手道の演武と和太鼓衆鼓動塾の演奏が披露されていました。

ステージ前では子どもの発表を見守る保護者や、飲食ブースの料理を楽しみながら観覧する来場者の姿も。地域のイベントらしい温かい雰囲気に包まれていました。

さらに警察と自衛隊からは車両の展示が行われ、子どもたちから人気でした。職員から説明を受けたり、車両に触れたりする場面も。

鹿児島矯正展を通じて伝えたいこと

令和7年度の鹿児島矯正展では、刑務所の施設運営について知るだけでなく、矯正行政に対する近隣地域の方々の理解を一層深める機会となりました。刑務所作業製品や刑務所内見学など、それぞれの取り組みからは更生に取り組む受刑者の存在が伝わってきました。
矯正展の大きな目的は、受刑者が社会復帰した際に地域で温かく受け入れてもらえる土台を育むことです。参加者である私たちが矯正行政の役割を知り、受刑者の立ち直りを応援することで、再び罪を犯す人を減らすことにつながります。
看守長の中谷さんは「受刑者が出所すれば地域社会に戻っていくことになる。改善更生のためにも地域の方々の理解が重要です」と語ります。
刑務所や少年院で生活をする人々が社会で再びスムーズに生活できるようにするためには、刑務所職員の指導だけでなく、私たち地域住民一人ひとりの協力が欠かせません。刑務所作業製品を手に取ることで、立ち直ろうとする受刑者たちの努力を受け入れることにもなります。
鹿児島矯正展は、まちとともに「再犯をなくす」という目標に向かって歩む、地域共生の象徴ともいえるイベントでした。刑務所を“閉じられた場所”から“地域とつながる場所”へと変える試みがここにあるのではないでしょうか。
鹿児島刑務所の基本情報
最寄駅
JR肥薩線吉松駅
所在地
〒899-6193 鹿児島県姶良郡湧水町中津川1733
交通手段
JR肥薩線吉松駅より車で7分
鹿児島刑務所
https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei05_00054.html





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