
政府・与党は、投資用不動産を利用した相続税の節税を抑制する検討に入りました。現在、不動産の相続税評価には路線価などが用いられていますが、これらは市場価格よりも大幅に低く算定される傾向があるため、相続税額も低く抑えられる仕組みとなっています。今回の見直しでは、購入時の価格を評価基準とすることで、実際の資産価値に応じた公平な課税を実現する方針です。
政府がこうした節税手法を問題視する背景には、「現金ではなく不動産で相続するメリット」を強調して物件を販売する手法が広がっていることがあります。政府の調査によれば、現金であれば約12億3千万円の相続税が課せられるケースでも、投資用不動産として保有することで4億4千万円まで税額が下がった事例があったことが明らかになっています。また、国税庁が11月13日に開催された政府税制調査会に提出した資料では、取得価額21億円の一棟賃貸マンションを通達評価額4.2億円として相続税申告し、約7.9億円の税負担を軽減したケースも紹介されています。
今回の見直し案では、節税目的の駆け込み取得を念頭に、対象を購入から5年以内に相続する賃貸用の不動産に限定する方針です。評価方法については、購入時の価格を基準額とし、購入から相続までの地価変動を加味したうえで、約2割の減額補正を行う計算方式の採用が検討されています。これにより、相続税評価額は従来の路線価方式よりも実勢価格に近い水準となり、過度な節税効果は抑制される見通しです。政府・与党は、2026年度税制改正大綱への明記を目指しています。
不動産小口化商品の評価基準も取引価格へ見直し
今回の見直し対象には、少額から投資可能な「不動産小口化商品」も含まれています。不動産小口化商品とは、高額な不動産を複数の投資家で出資し共有する仕組みで、相続税逃れの手段として問題視されてきました。
国税庁が政府税調に提出した資料では、3,000万円で購入した不動産小口化商品(信託受益権)を孫に贈与し、通達に基づき480万円と評価して贈与税額を1,146万円軽減した事例が示されています。この事例では、その後に信託受益権を売却し、取得価額とほぼ同額で現金化しており、通達評価額が取得価額の約6分の1に圧縮されるケースとして紹介されています。
こうした小口化商品については、購入時期にかかわらず取引価格などを基準に相続税を算定する手法へ改正される見込みです。2026年(令和8年)以降の相続・贈与から適用される可能性があり、相続対策として小口化商品を保有している方への影響が注目されています。
今回の改正により、市場価格と相続税評価額の乖離を縮小し、課税の公平性を高めることが狙いとされています。富裕層を中心に活用されてきた相続直前の不動産購入による節税スキームに、制度として明確な歯止めがかけられることになりそうです。












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