19日にイランでヘリコプターが墜落し、ライシ大統領やアブドラヒアン外相ら搭乗者全員が死亡しました。この事故は、イラン北西部の東アゼルバイジャン州で発生し、国営メディアは霧などの悪天候が原因と伝えています。
この事故を受け、イラン各地で追悼集会が開かれ、首都テヘランや大統領の出身地マシュハドなどで、多くの人々が犠牲者に祈りを捧げました。最高指導者ハメネイ師は国をあげて、5日間の喪に服することを発表しました。
当面の間、大統領職務はモフベル第1副大統領が代行し、6月28日に新しい大統領を選ぶ選挙が実施される予定です。イランの選挙は「護憲評議会」が候補者の資格を事前審査し、指導部に忠実な保守強硬派を中心に立候補が認められる公算が大きいのが特徴です。
今回の選挙は、前回の国会選挙で穏健・改革派の候補が失格となったことで、「選挙制度が不公正」との批判が市民から上がっています。ライシ大統領の突然の死去で強硬派内にも有力候補が少なく、モフベル第1副大統領や前回の大統領選でライシ大統領に敗れた候補らが出馬を模索するとみられています。
ネット上では、「実際は事故なのだろうが、起きたタイミングが悪すぎる」「これで中東情勢が悪化しなければ良いが」「今回のイランの大惨事は、危機管理体制に大いに問題があると感じた」などの意見が寄せられています。
イランのライシ大統領とは?2021年6月の選挙で大統領に選出
イランのライシ大統領は2021年6月に選出され、道徳関連法の強化や反政府デモの弾圧を指示し、強硬な姿勢を示してきました。イスラム法学者であるライシ大統領は、検事総長や司法府の代表を歴任し、保守強硬派の指導者として知られています。
イラン最高指導者ハメネイ師の後継候補の1人とされ、ハメネイ師も彼の主要政策を支持していました。彼の指導下では、反欧米の外交路線が強化され、特にイスラム組織ハマスを支持し、イスラエルや米国と対立する姿勢を強めていました。
また、ライシ大統領は85歳のハメネイ師の後継者として有力視されていましたが、国内の抗議や経済立て直しの失敗でその立場は揺らいでいました。彼の前任者であるロウハニ前大統領の現実主義的な体制とは異なり、強硬派が支配する体制が続いています。
ライシ大統領は女性の逮捕・死亡事件に際し、「治安を乱すことは許されない」として取り締まりを強化し、反政府デモを暴力的に弾圧しました。さらに、主要国との核協議でも強硬な姿勢を見せていました。