懲役から拘禁刑へ。罰して終わりではない、若年層の再犯防止に不可欠な福祉的アプローチとは?

犯罪をした若者と話す弁護士

前回の記事では、国や自治体が進める再犯防止に向けた社会復帰支援の取り組みを解説しました。就労や住居の確保、弁護士による「よりそい弁護士制度」など、多方面からのサポートが重要であることをお伝えしています。

今回は、特に「若年層(20代〜30代)」の被疑者・被告人が抱える問題に焦点を当てます。統計では犯罪者全体に占める若者の割合は減っています。しかし、再犯者の多くが20代で最初の犯罪を経験しているというデータもあり、若い時期にいかに負の連鎖を断ち切るかが大きな課題です。彼らが直面する現実や、家族だけに頼らない支援のあり方について考えていきましょう。

<目次>

若年層の被疑者・被告人が抱える問題点

逮捕された若者

最後に、特に若年層の犯罪者・非行少年に焦点を当て、その更生と再犯防止について考えます。刑法犯の犯罪検挙人員における若年層の割合自体は、比較的減少傾向にあると言ってよいでしょう。

令和4年の犯罪白書によれば、平成4年(1992年)から令和3年(2021年)にかけて、検挙された人の年齢層別の構成比をみれば明らかです。30年ほど前の平成4年では、20代未満の割合が40%を超え、50代以上の人は20%未満でした。

しかし令和3年だとそれが逆転し、20代未満の割合は20%以下に減少した一方、50代以上の人は約40%にまで増加しています。これについてはさまざまな理由が考えられますが、一般的には少子高齢化による高齢者数の激増、再犯者の増加、刑法犯全体の減少等が挙げられるでしょう。

そのなかで、犯罪傾向の若年化という点は気掛かりです。平成19年の犯罪白書によれば、再犯者の初犯時の年齢は20代前半が約40%と突出して多く、20代全体では約60%を占めていました。つまり多くの再犯者は20代で犯罪キャリアが始まっており、若い時期にいかに再犯の連鎖を断つかが重要となります。その後の年の犯罪白書においても、若年犯罪者の再犯率がたびたび指摘されています。

若年の被疑者・被告人が抱える問題としてまず指摘されるのは、社会とのつながりの脆弱さです。高校に在学している頃から非行に走ったり、大学・就職に失敗したりして犯罪に及ぶケースでは、そもそも安定した職歴や学歴、人間関係が乏しいまま成人しています。

その結果、初めて刑務所を出た後も職に就けなかったり、就けても長続きせず短期間で離職してしまったりしがちです。よく考えればこれも当たり前です。一般的な高校や大学を出て「さあこれから社会人として働き始めよう!」という人たちでさえ躓くことがあるのに、さらに前科があるとか服役していたなどのディスアドバンテージを負った人が、スムーズに社会へ溶け込むというのは相当困難でしょう。

そして収入が途絶え生活に困窮すると、窃盗や詐欺などに再び手を染めてしまう、人間関係や仕事のストレスのはけ口として薬物やアルコールを乱用してしまう、自暴自棄的になって粗暴犯(特に通り魔的犯行、無差別的な犯行)をしてしまうといった負の連鎖が若年層には起こり得ます。この年代は社会経験が浅く衝動的・享楽的な傾向もあるため、金銭的な誘惑や周囲の悪い仲間の影響を断ち切るのが難しい側面もあるでしょう。

家族頼みにならない支援の形が必要

家族との関係性に悩む若者

次に、家族との関係や社会内の居場所の問題があります。少年院や施設を出た直後であれば適切な監督者の下に戻れても、その後再犯に至る時点では親との同居が解消していた、という人も少なくありません。

家庭環境に問題があったり、親が高齢・不在だったりして十分なサポートを受けられない若者は、社会に居場所を見いだせず孤立しがちです。実際、出所者が家族や支援者との人間関係が切れて社会的に孤立することが再犯の大きな要因であることも明らかになっています。孤独と行き詰まりから再び犯罪に走る若者を出さないためには、家族だけでなく地域の大人やメンター的存在が継続的に寄り添うことが重要です。

さらに、若年層特有の課題として発達上・精神上の問題も挙げられます。たとえば衝動性の強さや依存症傾向(薬物・アルコール・ギャンブル等)、発達障害による生きづらさなどが背景にあるケースでは、単に懲罰的に処遇するだけでは再犯防止につながりません。

少年事件の弁護経験から言えることは、こうした若者には福祉的・治療的アプローチが不可欠だということです。矯正施設や保護観察所では専門プログラムの整備が進んできていますが、地域社会でも医療機関やカウンセリングにスムーズにつなげる体制が必要でしょう。

若年層であれば親や親族といった「頼るべき家族」が健在であることも多いですが、更生のための支援を家族頼みにしてしまうことは、結局「家族がギブアップしたら誰も見る人がいなくなる」環境を作ってしまいます。更生支援に取り組むためには、家族・地域・社会という複数のスケールで支援のネットを作る必要があるでしょう。

最後に個人的な意見を述べておきますが、「更生できる若者は多い」ということです。統計上、少年院出院者の約3割がその後再び罪を犯しているとはいえ、裏を返せば約7割は再犯していません。彼らが再犯せずに済んだ背景には、家族の献身や就労機会との出会い、福祉による生活安定などさまざまな制度や人々の支えがあったはずです。

私たち弁護士を含む社会の大人がその支え手となることで、若者の人生の立て直しに寄与し、ひいては社会全体の再犯減少につなげることができるでしょう。

おわりに

被告人となった若者と向き合う弁護士

刑事弁護の現場では、被告人一人ひとりと真摯に向き合い、更生への道筋を示すことが求められます。特に罪を認めた被告人の場合、情状弁護を尽くして裁判官・検察官に「この人ならもう一度社会でやり直せる」という材料を提示することが弁護人の使命です。

そして判決後も、弁護士や支援者が連携して途切れないサポートを提供することが、再犯防止には欠かせません。幸い近年は国の施策や民間の取り組みが進みつつあり、社会全体で元受刑者の更生を支える土壌が少しずつ整ってきています。

今後ますます重要となるのは、「罰を与えて終わり」ではなく「社会に戻してからが本番」という視点です。令和7年から、「懲役刑」は「拘禁刑」へと名称が変わりました。

これは単に名前が変わったというだけに留まりません。「悪いことをした人を懲らしめるために強制的に労働に従事させる」という内容から、「一定の期間拘束して、社会で生活できるように必要な処遇をする」というものに変わっています。受刑者の特性に合わせて、社会復帰のためのプログラムが複数用意されているのです。

弁護士をはじめ司法関係者と福祉・雇用・教育など他分野の専門家が協力し合い、犯罪をした人が二度と罪を犯さずに済む環境づくりを進めていく必要があります。それこそが真の意味で社会の安全安心を実現する道であり、刑事弁護人の果たすべき公共的役割でもあると言えるでしょう。

足立直矢弁護士

投稿者プロフィール

大阪大学法学部卒,軽犯罪から重大犯罪、経済犯罪や収賄事件に至るまで幅広く担当。情状弁護,再犯事件,非行少年の弁護にも注力。時には厳しいアドバイスをすることもあり、依頼者やその家族からの信頼は厚い。

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