朝日新聞社が10月1日から、福岡・山口・静岡の3県で夕刊発行を休止することが明らかになりました。同社はこれまでも段階的に夕刊発行を縮小しており、2023年5月には愛知・岐阜・三重の3県で約3万9,000部の夕刊を休止。2024年4月には、北海道でも夕刊をやめています。
今回の休止は、新会長・新社長にとって就任直後の暗いニュースとなります。特に福岡県は西部本社(北九州市)の所在地であり、「紙離れ」や「部数減」の深刻さを物語っています。
以前西部本社に勤務していた男性社員は、「紙の新聞は本当にもうダメなんだな」と嘆きました。夕刊休止の理由として、同社は原材料の高騰や朝刊のみの購読増加、デジタルサービス利用の拡大などを挙げています。
福岡など3県での休止部数は合計4万部を超えるとのことです。かつての「全国紙」の面影は薄れ、朝日新聞社は厳しい局面に立たされています。紙媒体の存在意義が問われる中、同社の今後の舵取りに注目が集まります。
夕刊発行部数、今年分の調査では100万部を下回ることが確実視
朝日新聞社の夕刊販売部数が急速に減少しています。日本ABC協会のレポートによると、2023年7月~12月平均の約105万部の夕刊発行部数は、北海道と福岡・山口・静岡の3県での休止により、今年分の調査では100万部を下回ることが確実視されています。
一方、ライバル紙の読売新聞社は、朝日新聞社が休止する地域でも夕刊発行を維持しています。両社の経営戦略の違いが浮き彫りになっていますが、朝日新聞社のデジタルシフトは必ずしも成功しているとはいえません。
日本新聞協会の調査では、新聞発行部数が2021年から2023年までの3年間で443万部も減少しています。朝日新聞も例外ではなく、2023年3月の朝刊部数は376万1,000部、2024年3月には343万7,000部まで落ち込んでいます。
それに対し、角田克社長が注力する朝日新聞デジタル(朝デジ)の有料会員数は、2023年3月末で30万5,000、2024年3月末で30万6,000とほぼ横ばいです。紙の落ち込みをデジタルでカバーできていないのが現状です。
朝日新聞社は多数のデジタルメディアを抱えていますが、部数減を補うほどの収益源には育っていません。また、他社の好決算と比べると、朝日新聞社の業績は芳しくないといえるでしょう。
デジタルシフトを進める同社ですが、紙媒体の衰退に歯止めがかからない厳しい状況が続いています。