8月5日の東京株式市場は大荒れです。日経平均株価は前週末比で一時3,200円超の急落となり、年初来安値を下回りました。2023年末の終値も割り込み、2024年に入ってからの上昇分を全て失う展開です。
ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは、「市場参加者の全てが一気にマーケットから資金を退避させようとして、売りが売りを呼んでいる」と指摘しています。
この急落の引き金となったのは、前週末に発表された米雇用統計の結果です。就業者数の伸びが市場予想を下回り、景気後退懸念から米国株が大きく下落しました。
さらに、円相場が約7ヶ月ぶりの円高・ドル安水準に達したことで、ピクテ・ジャパンの糸島孝俊ストラテジストは「日本企業の想定為替レートを下回る水準まで円高が進み、投資家は下方修正まで意識せざるを得なくなっている」と警鐘を鳴らしています。
市場の混乱を示す日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)は、2020年4月以来の高水準となりました。東証プライムの9割超が下げる全面安となり、日経平均の下げ幅は2営業日で一時5,000円を超えました。
東証株価指数(TOPIX)と日経平均株価の先物取引でも、取引を一時中断する「サーキットブレーカー」が相次いで発動される異常事態となっています。市場からは下落余地を指摘する声も上がっており、混乱が収束する気配はありません。
三井住友・三菱UFJ・みずほの銀行株、二桁の下落率を記録
直近まで上昇基調だった銀行株も大幅に下げ、三井住友フィナンシャルグループは一時ストップ安水準まで下落しています。三菱UFJフィナンシャル・グループとみずほフィナンシャルグループも、二桁の下落率を記録しました。
国内債券市場では長期金利が急低下し、新発10年物国債利回りは約4ヶ月ぶりの低水準をつけています。auカブコム証券の山田勉マーケットアナリストは、「急落で追い証が発生し、個人投資家の換金売りが広がっている」と指摘。松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストも、半導体関連銘柄などで追い証が発生しているとコメントしました。
7月26日時点の信用取引の買い残高は、約18年ぶりの高水準です。急落前に信用買いに動いていた個人投資家の売り戻しが広がっています。
さらに、海外投資家も先物と現物株を売っており、東海東京インテリジェンス・ラボの安田秀太郎マーケットアナリストは、「日銀の利上げが大きな転換点となり、アベノミクス初期の買い越しとは逆の動きになっていそうだ」と分析しています。
日経平均の株価収益率(PER)は、2日時点で14.9倍とアベノミクス以降の長期上げ相場の平均を下回っていますが、ニッセイ基礎研の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「米国株が一段安になると、それに連れ安となるリスクがある」と警鐘を鳴らしました。
米国市場では景気悪化懸念が急浮上し、ドル安・円高が進めば日本株の重荷になりそうです。東証プライムの売買代金は5日午前の時点で3兆6,034億円に達し、過去最大を記録する可能性があります。
年金勢も大きく動きづらい状況の中、5日がセリングクライマックス(売りの最終局面)となるかどうかが注目されています。