
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は10月14日、高級ブランド3社に計約270億円の制裁金を科すと発表しました。対象となったのは、イタリアの「グッチ」、フランスの「クロエ」、スペインの「ロエベ」です。各社が小売業者の価格決定を制限し、消費者が安く購入する選択肢を奪ったことが、EU競争法(独占禁止法)違反と判断されました。
今回の決定は、高級ファッション業界における価格維持慣行に対してEUが厳しい姿勢を示した象徴的な事例となりました。制裁金の内訳は、グッチ約1億1967万ユーロ(約210億円)、クロエ約1969万ユーロ(約34億円)、ロエベ約1800万ユーロ(約31億円)となっています。各社は調査に協力したため、当初の金額から15〜50%減額されています。
欧州委員会の調査によると、3社はEU域内の独立した小売業者に対して厳しい価格統制を行っていました。オンライン販売と実店舗の双方で、推奨小売価格からの逸脱を禁止したり割引率の上限を設けたり、セール期間を指定したりするなどの制限を課していたのです。
特にグッチは、一部製品のオンライン販売自体を禁止していたことも明らかになっています。違反行為の期間は、各社それぞれ2015年〜2019年から、欧州委員会が調査に入った2023年4月まで続いていたとされています。
これらは「再販売価格維持(RPM)」と呼ばれ、メーカーが小売業者による価格競争を妨げる独占禁止法違反行為です。EU競争法では「ハードコア制限行為」として位置づけられています。価格競争の減少により、消費者は本来より高い価格での購入を強いられ、安く買える選択肢を奪われていました。
欧州委員会で競争政策を担当するテレサ・リベラ上級副委員長は、「この決定は、ファッション業界に対して『欧州では、このような慣習は許さない』という強いメッセージを送るものだ」と強調。また、「欧州の消費者は、何を購入するにしても真の価格競争の恩恵を受ける権利がある」と述べ、消費者保護の重要性を訴えました。
再販売価格維持がもたらす市場への影響
再販売価格維持(RPM)は、流通段階の自由な競争を阻害し、正常な価格形成を妨げて消費者利益を損なう行為です。多くの国では独占禁止法により原則禁止されています。同一ブランド製品を扱う小売業者間での価格競争が不要になると、非効率的な取引慣行が温存されて流通の合理化は進まず、効率性の高い小売業者の市場参入や低価格販売業態の拡大を阻害します。
EU競争法では、RPMは競争に重大な悪影響を及ぼす「ハードコア制限行為」として位置づけられ、たとえブランド価値維持を主張しても適用免除を受けることは極めて困難です。価格監視ソフトの利用や、推奨価格逸脱店への供給停止といった間接的な価格拘束も摘発対象となり得ます。今回の決定により、高級ブランド業界全体で価格設定の透明性と公正な競争環境の確保が、一層強化されることが期待されます。












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