
米スペースXが、ロケットを空中でキャッチする画期的な実験に成功しました。イーロン・マスク氏率いる同社は13日、テキサス州の発射台「メカジラ」で、大型ロケット「スターシップ」の推進装置「スーパーヘビー」の捕獲に挑戦しました。
打ち上げから約7分後、スーパーヘビーが高度を下げながら帰還してくると、メカジラの巨大なアームが箸のように動いて機体をつかまえました。この大胆な発想は、機体の損傷を抑え、効率的な再利用を実現するためのものです。打ち上げコストを大幅に低減し、宇宙輸送に革新をもたらそうとしています。
スターシップは全長約120メートルで、過去最大のロケットを上回る規模です。今回の試験は5回目の打ち上げでした。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の後藤大亮氏は、「ロケットの規模が大きくなると着陸脚の設計が難しくなり、コストも上昇する」と指摘。スペースXは過去の経験を生かし、高度な飛行制御技術を実証しました。
イーロン・マスク氏は、スターシップで完全再使用を実現し、打ち上げコストを1回あたり100万〜1,000万ドル(約1億5,000万〜15億円)に抑えられる可能性を示唆しています。
イーロン・マスク氏、2020年にメカジラの構想を提案
スペースXのイーロン・マスク氏は、2020年にメカジラの構想を社内で提案しました。しかし、機体との衝突リスクなどから反対意見も少なくなかったそうです。
イーロン・マスク氏は、発射台の腕を「チョップスティックス(箸)」と呼ぶべきだと述べました。これは、映画のワンシーンにちなんだユニークな発想です。
投資会社イノベーション・エンジンの小松伸多佳氏は、スペースXが実用化より先に新技術の検証を行う理由について、メカジラが機体再利用の重要な要素になるとみているからだと分析しています。
スペースX社の躍進により、多くの企業がロケットの再利用技術の獲得を目指すようになりました。小松伸多佳氏は、再利用できないロケットは長期的にコスト競争で不利になる可能性が高いと指摘しています。
日本のH3ロケットは使い捨てですが、打ち上げ費用を大幅に抑える工夫が施されています。将来的には、再利用技術の飛行実証も視野に入れているとのことです。
スペースXは高い技術力を誇りますが、スターシップにはまだ多くの課題が残っています。2026年に予定されるアルテミス計画での月面輸送の実現には、多くの飛行実証が必要とされます。