
カナダで起きたたばこの健康被害をめぐる訴訟で、日本たばこ産業(JT)、フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)、ブリティッシュ・アメリカン・タバコの大手3社に、総額325億カナダドル(約3.5兆円)の和解案が提示されたことが18日に明らかになりました。
この和解案は、裁判所から任命された調停委員によって提案されたものです。PMIのヤチェック・オルザックCEOは、「訴訟手続きが終結し、当社とその利害関係者が将来の事業に集中できるようになることを期待する」とコメントしています。
一方、JTは「多くの分野で大きな進展があったことを認識している」と取材に答えていますが、「実行可能な和解案を見いだすには、解決しなければならない重大な問題がある」と述べ、和解成立への慎重姿勢を示しました。
12月に予定される裁決で合意に至れば、2025年前半に公聴会が開かれ、和解が正式に成立する見込みです。ただし、PMIによると、3社間での和解金の負担割合についてはまだ決着がついていないとのことです。
ネット上では、「めちゃくちゃだな。違法なタバコを販売した訳でもないんでしょ?」「酒の方が人体への悪影響は大」「こりゃひどい。カナダってもう少し良識のある国だと思った」などの意見が寄せられています。
健康リスクの説明が不十分なままたばこを販売したことが原因
そもそも今回の訴訟は、3社がカナダで健康リスクの説明が不十分なままたばこを販売したことで、集団訴訟が発生しています。2015年と2019年の裁判では、原告である消費者側の主張が認められる判決が下されていました。
2015年の裁判では、たばこ会社がたばことがんの関連性を認識していたにもかかわらず、顧客に警告しなかったとして賠償支払いが命じられています。この裁判の9年後に、今回の訴訟が発生しました。
和解が成立すれば、カナダにおける一連のたばこ訴訟は全て終結するとPMIは説明しています。しかし、禁煙健康増進協会など一部の団体からは、「医療制度への多大な負担を意図的に引き起こした企業が、集団訴訟の歴史的敗訴から逃れることが許されるのか」と和解案に反発する声も上がっています。
たばこ大手3社にとって、和解成立は悲願とも言えるものですが、カナダ国内での反発も根強く、今後の動向が注目されます。