
OpenAIが開発したChatGPTがいま話題になっています。そんななか、政府の個人情報保護委員会は2日、米新興企業のOpenAIに対して行政指導をしたと発表しました。
行政指導の理由は、個人の病歴などのプライバシーを侵害する恐れがあるためで、個人情報保護法に基づき、1日付で注意喚起をしたとのことです。ただ、現時点では具体的な被害情報や同法違反は確認されておらず、今後の行動を踏まえての注意喚起とされます。
ChatGPTに代表される生成AIをめぐり、個人情報保護委員会が行政指導を行うのは今回が初めてです。OpenAIが十分な対応を取らなかった場合は、立ち入り検査や罰金処分など、何かしらの措置を受ける可能性があります。
同法は個人情報のうち、人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪歴などを「要配慮個人情報」と規定し、取得する際には本人の事前同意を原則必要としています。この規定を踏まえ、OpenAIが利用者の事前同意がないまま該当する情報を取得しないよう求めました。
また、その上でAIの記憶学習について、収集する情報に要配慮個人情報が含まれないようにし、もしも含まれていた場合は即時に削除したり、個人が識別できないようにしたりなど、工夫を取り入れるよう指導しました。
そのほか、個人情報の利用目的に関する日本語での注意喚起がないことも問題視しており、OpenAIに対して日本語での通知も求めています。
ネット上では、「日本語の注意項目とか、説明書きは結構大事だと思う」「法律上の個人情報の既定はあまりにも広く現実的には守れない」「日本語対応は必要と思います」などの意見が寄せられています。
プライバシー保護策として4月に履歴オフのモードを実装
OpenAIが開発したChatGPTについて、企業の機密情報を入力するとAIに学習され、他者に流用されかねないため「プライバシーの観点から使えない」という声が多くあがっていました。実際、イタリアの規制当局は3月31日、ChatGPTの使用を一時的に禁止すると発表しています。
それを受けたOpenAIは4月25日、AIとの会話履歴を消去する履歴オフのモードを実装しました。これは、利用者が会話で用いた情報を「保存する」「保存しない」の2つから選択でき、「保存しない」を選んだ場合は、入力した情報がAIの学習に利用されなくなるというものです。
ただし、「保存しない」を選択した場合でも、不正を監視するために30日間はデータが残ります。
その後の4月28日にOpenAIは、同社が開発したChatGPTの利用がイタリアで再開されると発表しました。プライバシーポリシーを懸念するイタリア当局に「対処、もしくは明確にした」と説明したとのことです。