ロシアとウクライナの軍事衝突が激化する中、両国の間でミサイル発射をめぐる情報戦が繰り広げられています。ウクライナ軍は21日、ロシア軍がウクライナ東部への攻撃において、ロシア南部アストラハン州から大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射したと発表しました。
これに対し、ロシアのプーチン大統領は同日、新型の中距離弾道ミサイルを使用したと明らかにし、ICBMを発射したというウクライナ側の主張を否定しています。欧米メディアは情報が錯そうする中、米国政府当局者の話として「発射されたのはICBMではなく、中距離弾道ミサイルだ」と報じています。
ロシア側は、ウクライナ軍が欧米から供与された射程の長いミサイルでロシア領内を攻撃していると反発を強めています。一方、ウクライナ側はミサイルの使用について確認を避けています。
ドニプロ市の重要施設へのロシア軍の攻撃では、産業施設や住宅が被害を受け、火災が発生し2人が怪我をしたことが明らかになりました。2024年の米大統領選でドナルド・トランプ氏の当選が確実視される中、就任前にロシアとウクライナがみずからに有利な状況を作ろうと軍事、情報戦の両面で攻防を繰り広げています。
ウクライナのゼレンスキー大統領「特徴がICBMだった」
ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、SNSに公開した動画で、ロシアが発射したミサイルについて「速度や高度などあらゆる特徴がICBMだったことを示している」と述べ、専門家による検証が進められていることを明らかにしました。
一方、ロシアのプーチン大統領は同日の演説で、ウクライナ東部への攻撃に新たに開発した極超音速の中距離弾道ミサイル「オレシュニク」を使用したと発表。ICBMを発射したというウクライナ側の主張を否定するとともに、「実験は成功し、目標は達成した」と実験を兼ねた攻撃だったと主張しました。
プーチン大統領はさらに、ウクライナへの軍事支援を続ける欧米諸国に対し、「われわれの施設に対する兵器の使用を許可している国の軍事施設に対して、われわれは兵器を使用する権利がある」と警告。地域紛争が世界的な性格を帯びてきたと述べました。
米国の国防総省であるパトリック・シン副報道官は記者会見で、ロシアが発射したミサイルは「実験的な中距離弾道ミサイル」であり、ICBMをもとに作られたものだと指摘しており、「戦場に投入された殺傷能力の高い新たなタイプの兵器であり、懸念している」と述べました。