
石破茂首相は2025年10月10日、退任を間近に控えた中で戦後80年に寄せた個人の所感を発表しました。この発表は自民党内の反対意見を押し切る形で行われ、党内で大きな議論を呼んでいます。
石破首相は今回の所感について、これまでの戦後50年、60年、70年の談話では「なぜあの戦争を避けることができなかったのかという点にはあまり触れられていない」として、その分析に重点を置いたと説明しました。所感では、戦前の政治システムが戦争の歯止めとならなかった理由として、大日本帝国憲法の制度上文民統制の原則が欠如していたこと、政党の権力争いのため軍部に利用される結果となったこと、議会が軍に対する統制機能を失っていたことなどを具体的に指摘しています。
特に注目されるのは、石破首相が現代の政治情勢に対する警鐘として「無責任なポピュリズムに屈しない、大勢に流されない政治家の矜持と責任感を持たないといけない」と強調した点です。また、戦争が長引く中で戦争を積極的に支持する論調だけを伝えたメディアの姿勢についても問題として言及し、現代のメディアのあり方にも示唆を与える内容となっています。
自民党内で激しい賛否
今回の所感発表に対する自民党内の反応は大きく分かれています。高市早苗総裁(新総裁)は10日昼に首相官邸で石破首相から発表予定を告げられた際、「閣議決定されていない内容を発表するとのことだった」と述べ、政府の公式見解にはならないとの認識を示しました。
自民党内では特に保守派議員から強い反発の声が上がっています。戦後70年の安倍首相談話において歴史問題は「解決済み」との立場を取る議員たちは、首相の退任直前に行われる今回の発表に対して公然と反対する意見を表明していました。船田元衆院議員をはじめとする複数の議員からは「首相個人の考えにすぎない」との批判的な声も出ています。
一方で、野党側からは一定の評価も寄せられています。国民民主党の玉木雄一郎代表は10日、記者団に対して「非常に良い内容だ。戦争に至る国内体制システムへの洞察は鋭い」と述べ、高く評価する姿勢を示しました。しかし、社民党の福島瑞穂党首からは「迫力不足の最後っ屁」「自民党内への配慮としか思えない」といった厳しい批判も出ており、野党内でも評価は分かれています。
石破首相は記者会見において、約20回の推敲を経て作成したことを明かし、「軽率に考えて書いたものではない。首相としての責任を十分に自覚して作成した」と反論しています。また、今回の所感が内向きとの指摘に対しては、「国民の皆さまと共に考えたい」との思いを込めたものであると説明しました。
今回の戦後80年所感は、閣議決定された過去の首相談話とは異なり、石破首相個人の見解として発表されたため、その正統性や継続性について議論が続いています。退任を目前に控えた少数与党の首相による発表という特殊な状況も、党内外での評価を複雑にしている要因となっています。




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