
政府と東京都が、東京地下鉄(東京メトロ)の株式上場と売却を2024年度中に計画していることが明らかになりました。この売却計画では、両者が現在保有している株式の100%のうち、最終的には50%を市場に売り出すことを目指しています。国が保有する分の売却益は、東日本大震災の復興財源に充てられる予定です。
東京メトロの株式は国が53.4%、東京都が46.6%を保有しており、夏以降の上場を目指しているとのことです。売却にあたり、東京都は2024年度予算案に約36億円の関連経費を計上し、予算成立後の3月末以降、国と具体的な協議を進める計画です。この売却は、日経平均株価が約34年ぶりの高値圏で推移している現在の東京株式市場の好調な環境を背景に進められます。
復興財源確保法により、2027年度までに東京メトロ株売却から生じた国の収入は復興債の償還財源に充てられることが定められています。この売却計画は、東京メトロの財政基盤強化とともに、東日本大震災の復興支援の一環として重要な意味を持ちます。
市場と協議を進めながら、適切な売却時期を見極めることが今後の大きな課題となりそうです。ネット上では、「雪や大雨で運行が停止することのない東京メトロは、優良株と思うし成長株だと思います」「都心の一等地も押さえているので一定の人気は確実だろう」「安定株として欲しいなあ」などの意見がみられました。
東京メトロの運営状況 テレワークの普及により定期券収入が低下
東京メトロは現在、銀座線をはじめとした9路線を運営しており、2023年3月期の輸送人数は約22億人に迫りました。首都圏の主要私鉄と比較しても、その規模の大きさが際立っています。
新型コロナウイルス感染症の影響で一時は不透明だった売却計画も、市場環境の改善と業績の回復に伴い、現在は具体化の方向に進んでいます。また、2021年3月期には529億円の赤字に沈んだ最終損益も、2023年3月期には277億円の黒字へと転換しました。
ただし、テレワークの普及による定期券収入の回復は依然として完全ではなく、この新しい働き方が定着すれば、収益構造の変化が求められます。新駅・新線建設など輸送人員増につながる計画は考えられていますが、過去の試算では「黒字化するまでに20年近く、建設費など累損を解消にするまでには40年かかる」と指摘されています。