孤立部族の島に米国人観光客が侵入 ココナツとダイエットコーラ持参で逮捕

インド当局は4月3日、現代社会から隔絶された先住民族が暮らす保護区域へ無断で上陸した米国人観光客を逮捕したと発表しました。この事件は、外部との接触が制限されている希少な孤立部族の保護政策に再び注目を集めています。

逮捕されたのは24歳のミハイロ・ビクトロビッチ・ポリャコフ容疑者です。彼はアンダマン諸島の北センチネル島に、ココナツとダイエットコーラを「贈り物」として持ち込み、約150人とされるセンチネル族との接触を試みました。

ポリャコフ容疑者は特異な接近方法を取っており、沖合から約1時間にわたって笛を吹き鳴らした後に上陸しました。わずか5分の滞在中に供物を置き、砂を採取し、動画撮影を行いました。所持していたアクションカメラには、違法上陸の一部始終が記録されていたといいます。

この事件は2018年に同島で米国人宣教師ジョン・アレン・チャウ氏が島民に殺害された事件を思い起こさせます。チャウ氏のケースでは、島の法的地位から遺体回収も調査も行われませんでした。

警察によると、ポリャコフ容疑者は3月31日夜に逮捕され、現在は3日間の勾留下で取り調べを受けています。彼は過去数ヶ月の間に2度この地域を訪れており、計画的な侵入だった可能性が高いとみられています。

北センチネル島とは?センチネル族が暮らす特別保護区域

​​北センチネル島は、インド領アンダマン諸島に位置する約60平方キロメートルの小島です。「世界で最も孤立した先住民族」と呼ばれるセンチネル族が暮らす特別保護区域として知られています。

この島には約150人と推定される先住民が、現代文明から完全に隔絶された生活を送っています。彼らは熱帯雨林での狩猟や海岸沿いでの漁により自給自足の生活を営み、弓矢や槍、手作りのカヌーを使用しています。

外部との接触は極めて限定的で、1800年代後半の英国人との接触以降、ほとんど交流がありません。1956年にインドは法律で島への立ち入りを禁止し、現在も5キロ圏内への接近は厳しく制限されています。

これは単なる文化保護だけでなく、外部からの病原体に対する免疫を持たない彼らの命を守るための措置です。2018年の米国人宣教師殺害事件や2025年の観光客逮捕事件が示すように、この孤立した世界は今なお強く外部との接触を拒んでいます。

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