
ソニーグループは5月14日、金融事業分離後も堅調な業績見通しを発表しました。2026年3月期の連結営業利益は前期比0.3%増の1兆2,800億円と予想され、これは3期連続での過去最高更新となります。
特筆すべきは、トランプ政権の関税強化による約1,000億円の減益要因がありながらも、ゲーム事業がこれを吸収する形で16%増益の4,800億円を見込んでいる点です。PS5向け人気タイトルの続編投入や継続課金モデルの好調が背景にあります。
米国外製映画への100%関税については、詳細が不明なため今回の業績予想には織り込まれていませんが、みずほ証券の中根康夫シニアアナリストは「ゲームや音楽、アニメはコストパフォーマンスが高く、旅行や外食に比べて景気後退への耐性が高い」と指摘しています。
投資家からも評価は高く、最大2,500億円の自社株買い発表も相まって、同日の株価は4%高の3,788円で取引を終えました。
時価総額は23兆2,954億円に達し、ディズニー(約29兆円)との差を約6兆円まで縮めています。4月30日時点では差がわずか1,300億円まで接近していました。
ソニーの次なる成長戦略 IPのクロスメディア展開に活路
ソニーグループが掲げる成長戦略の中核に、知的財産の全方位展開が位置付けられています。十時裕樹CEOは「ボトムアップでシナジーが出るようになり、スピードが上がってきた」と自信を見せ、グループ内でのコンテンツ融合に手応えを感じている様子です。
特に注目すべきは、10作品以上が進行中というゲームの映像化計画です。その目玉として2027年公開予定の『ゴースト・オブ・ツシマ』のアニメ化が挙げられます。
2021年に買収した米クランチロールとアニプレックスが制作を担当し、楽曲もグループ内の音楽会社が手掛ける完全内製の大型プロジェクトです。
蒙古襲来時代の対馬を舞台にした同作は、成功すればアニメの配信収入だけでなく、ゲームや音楽の新規顧客獲得にも繋がる可能性を秘めています。十時裕樹氏は「アニメは複数の事業において成長をけん引する主要な領域だ」と強調しました。
この取り組みは日本のコンテンツ輸出拡大の流れとも一致しています。経済産業省によれば、2023年のコンテンツ産業輸出額は5兆8,000億円と半導体や鉄鋼を上回り、政府は2033年までに20兆円へ拡大する目標を設定しています。
ソニーグループは米パラマウント買収を条件面で折り合えず撤退した経緯があります。成長速度が鈍化する中、ゲームのアニメ化成功は次の成長エンジンとなるかどうかの試金石となるでしょう。