
近年、国内の米市場で異例の事態が発生しています。2023年度以降、市場価格の急激な上昇と慢性的な品薄状態が続き、この現象は「令和の米騒動」と呼ばれるまでになりました。
民間事業者が保有する在庫量は大幅に減少し、全国平均の取引価格も前年同期を大きく上回る水準で推移しています。小売店では一部銘柄の品切れが相次ぎ、消費者の間でも不安が広がっている状況です。
この危機的状況は複数の要因が重なって生じています。生産面では、約50年間実施された作付面積削減施策の影響で、生産基盤が縮小し続けています。
2023年の記録的な高温により、主力品種の収穫量が大幅に減少したことも大きな打撃となりました。加えて、農業従事者の高齢化と後継者不足によって、小規模経営体の離農が加速しています。
一方、需要側では長期的な消費減少傾向に変化が見られます。新型コロナウイルス感染症の影響で家庭での米消費が増加し、外国人観光客の回復も需要押し上げの要因となっています。
しかし、最も深刻なのは在庫管理体制の機能不全です。市場の急変に対し、国の備蓄米放出判断が遅れ、需給調整機能が十分に働かなかった結果、価格高騰に歯止めがかからない事態となりました。
LINEヤフーが政府備蓄米の転売防止策を発表 新農水相が抜本的対策へ
深刻な米不足を受けて、官民連携による対策が動き出しています。LINEヤフーは5月28日、「Yahoo!オークション」と「Yahoo!フリマ」での政府備蓄米の出品を全面禁止すると発表しました。
転売による価格つり上げを事前に防ぐため、出品削除やアカウント停止に加え、AI技術を活用した監視体制を強化します。
この動きの背景には、農林水産大臣の電撃交代があります。江藤拓前大臣が「米は買ったことがない。支援者からもらって売るほどある」と発言し辞任に追い込まれ、小泉進次郎氏が新たに就任しました。小泉進次郎氏は「コメ担当大臣」を名乗り、就任直後から現場視察を重ねています。
石破茂総理大臣は米価格を現在の5キロ4,200円から3,000円台まで引き下げると明言し、小泉進次郎氏はさらに踏み込んで備蓄米の店頭価格を2,000円まで下げる目標を掲げました。従来のJA中心の入札制度を廃止し、随意契約による直接販売に転換する方針です。
楽天の三木谷浩史社長との会談も実現しており、ネット通販を活用した新たな流通ルートの構築も検討されています。政府は流通構造の抜本的改革により、米価格の安定化を目指す方針です。