
重大な司法誤判事件として注目された大川原化工機事件で、当局側が最終的な法的争いを断念しました。6月11日、東京都と国は東京高等裁判所の賠償命令判決に対する上告を取り下げ、被害企業および関係者への公式謝罪を表明しました。
この事件は、横浜市の化学機械製造会社が軍事利用可能な装置の違法輸出容疑で摘発されたものの、後に冤罪であることが明らかになった案件です。
5月の高裁判決では、警視庁公安部による輸出規制解釈が国際基準から逸脱し合理性を欠いていたと厳しく批判され、東京地検の捜査手法も違法と認定されました。賠償額は総額1億6,600万円超に達しています。
警視庁は被害者に対し「多大なご心労、ご負担をおかけした」として深い謝罪の意を示し、副総監を責任者とする専門検証チームの設置を発表しました。一方、東京地検も同様の謝罪を行い、最高検察庁による組織的な検証作業の実施を明言しています。
両組織は速やかな直接謝罪の実施を約束しており、今回の判決確定により、捜査機関の権限濫用防止と適正手続きの確保に向けた具体的な改革が求められることになります。
冤罪被害者らが心境語る 警視庁は組織的検証体制を構築
判決確定を受けて、大川原化工機の被害関係者が11日に都内で記者会見を実施し、長期間にわたる法廷闘争の終結について複雑な心境を明かしました。
特に痛切だったのは、勾留中にがんを患い72歳で他界した相嶋静夫氏の遺族による証言です。長男は涙ぐみながら、父親が社会的制裁を受けながら人生を閉じたことへの無念さを表明し、「4年前の起訴取り消し時点で当局が謝罪すべきだった」と強い憤りを示しました。
被害者側の執念深い闘いがなければ真相究明は不可能だったとして、司法制度への根深い不信を露わにしています。
元役員の島田順司氏は上告断念の知らせに安堵感を示す一方、法廷で頑なに過失を否定し続けた検察官に対する謝罪要求を改めて表明しました。大川原正明社長も区切りがついたことを評価しつつ、従業員とその家族への謝罪と、いわゆる「人質司法」の改革を強く求めました。
一方、警視庁は同日午後3時から幹部による説明会を開催しました。中島寛公安部長は被害者への直接謝罪について相手方の意向を尊重した丁寧な調整を約束し、検証作業完了を待たずに実施する方針を示しました。
中島寛公安部長は現段階での問題認識として、指揮系統と捜査手法の不備を率直に認めています。