- Home
- コラム・インタビュー, ビジネス
- おにぎりの新定番「巻くふりかけ」明治34年創業の老舗メーカーが挑んだ常識破りのふりかけ革命
おにぎりの新定番「巻くふりかけ」明治34年創業の老舗メーカーが挑んだ常識破りのふりかけ革命

「不景気になるとふりかけが売れる」そんな言葉を聞いたことはありませんか?物価高の救世主として、近年ふりかけが注目されています。茶碗に盛った熱々の白米にパラパラと振りかける……そんなふりかけのイメージを覆す“巻く”タイプのふりかけの商品化に成功したのが、田中食品株式会社です。
<目次>
明治34年創業・ふりかけ最古の「旅行の友」

田中食品株式会社(以下・田中食品)は、明治34年創業で、日本最古のふりかけ「旅行の友」を主軸とした多数のふりかけ商品を展開しています。日本で初めて小袋タイプのふりかけを販売したのも、同社です。
最近は地元・広島にちなんだ、お好み焼き味や広島菜味などの新しい味の展開に加え、広島東洋カープやサンフレッチェ広島など、プロスポーツチームとのコラボ商品など多岐に渡ります。
そんな田中食品が、2018年に発売を開始した「巻くふりかけ」が今注目を集めています。今回は、同社の代表取締役社長である、田中孝幸(たなか・たかゆき)氏に、巻くふりかけの完成までの道のりや今後の展望を伺いました。
ふりかけを“巻く”ことで新たな食の楽しみに

「巻くふりかけ」とは、田中食品が特許を取得している新しいふりかけ。巻くことを前提に作られているので、シートに柔らかさがあるのが特徴です。現在は、さけ・赤しそ・広島菜の3つの味を展開。素材の良さが活かされており、野菜はパリッと、さけは脂でしっとりとした質感の違いも楽しめます。

おにぎりに巻くことはもちろん、創作料理などに使うことができるほか、切り抜くことでお弁当のデコレーションにも役立ちます。そのほかにも、テーマパークではお子様メニューの装飾として取り入れられています。
2025年に入ってからは全国のメディアでたびたび取り上げられるなど、今、注目を集めている商品です。
商品化まで20年以上かかった理由は、こだわりの「シート状」

商品化まで20年以上の月日がかかった理由には、シート状に伸ばす段階でうまくいかなかったことが挙げられます。
「素材の良さはそのままにした商品が特徴ですが、シートに穴が開いてしまいます。シート状にできたとしてもデコボコして安定しない。売れる状態までもってくるところに時間がかかりました」
素材らしさを大切にした商品であるからこそ、繊維と繊維の結着がうまくいくまでに苦労したそうです。
「温度や湿度が一度変わるだけでシートの状態が変わります。さらに素材の特性によっても変わるので、それぞれの特性を捉えて研究しなければいけませんでした」と、田中さんは当時を振り返ります。
シート状のふりかけを作ろうと思ったきっかけを伺うと、当時は“ふりかけ”ではなく、“わかめ”の商品を出すために研究をスタートしたのだそう。開発に乗り出した当初は、わかめをシート状にした「焼きわかめ」の商品化に向け、何度も研究・検証・失敗を繰り返していきます。その中で「この技術はもしかしてほかの素材にすると活きるのでは?」と思ったのが、巻くふりかけ誕生のきっかけでした。
当時は、昆布や唐辛子、卵など…何十種類も試作を重ねたそうです。シート状にしたときに安定して提供でき、味や見た目にも基準を満たしたのが、現在の種類の販売に至ります。
田中さんは「固定観念を拭い去りたい。今はおにぎり用に塩分が強い商品のみですが、例えばスイーツに使えるものを販売しても面白いですよね。ここを起点とした新しい商品の可能性も感じられる開発になったと思います」と、話します。変わり種として抹茶などを試してみたのも、そのような構想があったからこそです。
「あんこを使った和菓子を抹茶のシートで包んだり、ミルクレープのように重ねた洋菓子を連想したり、ひとつの商品でさまざまなメニューの発想が生まれます。新しい食の可能性を感じてもらいたいです」
宮島口フェリー乗り場の店舗ではおにぎりの販売も

現在、巻くふりかけは広島県内のお土産店のほか、オンラインショップや宮島口フェリー乗り場etto(エット)内にある「旅行の友本舗」で販売しています。旅行の友本舗で食べられるおにぎりは、全部で13種類。実際に巻くふりかけを使ったおにぎりも商品化されているため、海外の方にも喜ばれています。その場で食べて味を知って、巻くふりかけを購入するお客様も。
「ふりかけは数百円で買えます。値段も高くなくかさばらないのでお土産として選んでもらうことも多いです」
そのほかにも、「旅行の友」をはじめとした田中食品の商品が購入可能。コンプリートしたくなるようなタナカのふりかけをモチーフにしたカプセルトイも人気です。

「ふりかけの販売数は伸びてはいますが、物価高の影響で販売単価が上がったことも要因として考えています」
ふりかけ市場全体が好調だった2024年の要因を、田中さんは分析しています。家庭にやさしい価格帯で買えるふりかけですが、今後はお米の値上がりなども売上に影響していく可能性も考えられます。
ふりかけを通して健康で長生きするために役立つ会社でありたい
今後の展望について、田中さんは「消費者の健康のためになる商品を出したい」と話します。現在は、サラダ用の粉末ドレッシングとして「無限サラダ」ふりかけを販売中。ふりかけのフレークは素材のおいしさをそのまま活かした製法で作られており、ドレッシングでは実現しにくい組み合わせも実現するのが特徴です。
例えば、シーザー風味は、白いドレッシングに“すりごま”を加えています。液状だと色味が変わってしまう組み合わせですが、ふりかけなので、その心配もなく、ごまの栄養素も摂れるという魅力的な商品。フレッシュ野菜と合わせてもべちゃっとせず、おいしくたくさん野菜が食べられる工夫がされています。お家ではもちろん、広島市内の飲食店でも使われる人気ぶり。
これからさらに加速する高齢化は、大きな社会問題でもあります。健康意識の向上の一助になれるふりかけの研究を現在進行中とのこと。目指すのは「食べていたら安心できるような存在のふりかけ」だそうです。“飲む”サプリメントや漢方とは違い、“食べる”ふりかけだからこその可能性を感じています。
「栄養を摂ることだけを目的とせず、おいしく健康になって欲しい。おいしいねって会話が生まれる、それは食事でしか叶えられないと思っています。食卓にあるのが当たり前の存在になることで、代々受け継がれていくのかな」と、田中さんは語ります。
戦時中の栄養の要として重宝されていたふりかけ。これからも形を変えながら多くの人の栄養面をサポートしてくれるでしょう。











-280x210.png)



募集|東京報道新聞-300x169.png)
