
深刻化する物流業界の人手不足を背景に、国土交通省が宅配サービスの根本的な制度変更に向けた検討を開始しています。現在、配達業界では再配達による労働負荷の増大が深刻な問題となっており、同省は年内を目途に新たなガイドライン策定を目指しています。
検討されている新制度では、受取人の在宅状況に関係なく、指定場所への荷物設置を基本的な配送方法として位置付けるというものです。
一方、従来の対面による直接手渡しについては、オプションサービスとして別途費用を徴収する仕組みの導入が議論されています。この制度改革により、配送効率の大幅な改善が期待されています。
同省は当初、2025年3月末までに再配達発生率を6%まで抑制する目標を設定していました。しかし、各種支援策を講じたにも関わらず、2024年10月の調査では約10%という高い水準が維持されており、目標達成は極めて困難な状況です。
新たな取り組みとして、専門家による委員会を近日中に発足させ、配送約款の抜本的な見直し作業に着手します。検討課題には、追加料金の設定方法や、荷物の盗難・紛失といったセキュリティリスクへの対応策も含まれています。
国土交通大臣が承認する標準運送約款は、業界内で広く参照される基準文書として機能しており、改定が実現すれば各企業の配送システムに大きな変化をもたらすと予想されます。
宅配大手の置き配対応、国交省新制度への準備進む
国土交通省が置き配の標準化と手渡し配達の有料化検討を発表する中、業界最大手のヤマト運輸と佐川急便は既に独自の置き配システムを展開しています。
ヤマト運輸では、クロネコメンバーズ会員向けに包括的な置き配サービスを提供しています。玄関前、宅配ボックス、物置など複数の配置場所から選択が可能で、配達完了時には荷物の写真付き通知を送信するセキュリティ対策を実装しています。
ただし、冷蔵品や代金引換などの特定サービスは対象外となっており、現状では従来の対面配達と併存する形で運用されています。
一方、佐川急便はスマートクラブ会員向けに7つの配置場所を設定しています。宅配ボックスや車庫、自転車のかごなど、幅広い場所から選択が可能です。置き配時には、配達記録管理のための写真撮影を必須としています。
両社ともに盗難や紛失については責任を負わない旨を明記しており、利用者の自己責任による運用を前提としている点が特徴です。
現在の置き配サービスは追加料金不要のオプション扱いですが、国土交通省の新制度が実現すれば、これらのサービス構造が根本的に転換される可能性があります。