中東産原油の「インド沖積み替え」ルートで日本へ、地政学リスク回避の新潮流

アラビア海の地図

中東アブダビ産の原油がインド西海岸のムンバイ沖において、超大型原油タンカー(VLCC)から別の船へと洋上で積み替えられ、日本へ向けて航行していることが明らかになりました。船舶追跡データによれば、この積み荷を載せたタンカーは4月中旬に九州へ到着する見通しです。

今回、積荷の移し替えを行ったのは、日本最大手の石油元売りであるENEOSホールディングスの海運子会社が運航するVLCC「ENEOS GLORY」です。同船は先週後半、別のVLCC「Olympic Luck」から約180万バレルの原油を受け取りました。「Olympic Luck」は、この積み替えの約1週間前に、オマーン湾のフジャイラで「マーバン原油」を積み込んでいたことが確認されています。

今回の動きの背景には、深刻化する中東情勢と地政学リスクの増大があります。現在、ホルムズ海峡の実質的な封鎖や周辺海域の混乱により、日本企業が現地で直接原油を積み込む作業が極めて困難な状況にあります。こうしたなか、インド沖のような比較的安全な海域での「積み替え(ハブ輸送)」は、エネルギーの安定調達に向けた画期的な手法として注目されています。ENEOSは九州の大分県に製油所、鹿児島県に備蓄基地を保有しており、今回の原油もこれらの施設へ運ばれるとみられます。同社広報は現時点での詳細なコメントを控えていますが、エネルギー供給網の維持に向けた民間レベルでの模索が、具体的な形となって現れた事例と言えるでしょう。

日本は原油輸入の95%以上を中東に依存しており、供給途絶は経済に直結する死活問題です。政府もこの状況を重く見ており、赤沢亮正経済産業相は3月末の会見で、ホルムズ海峡を経由しない代替ルートの確保や、中央アジア、南米といった過去に輸入実績のある国々からの調達検討を民間事業者に促していることを説明しました。

ネット上では、「エネルギー自給率が低い日本にとって、こうした工夫は心強い」「インドとの連携強化がエネルギー安全保障に直結する時代になった」「ガソリン価格への影響が心配だが、まずは確実に届くことが重要だ」といった声が寄せられています。

多角化する日本のエネルギー安全保障と周辺諸国の反応

中東情勢の緊迫化を受け、日本政府と民間企業は「脱ホルムズ海峡」を合言葉に、調達ルートの多角化を急ピッチで進めています。これまでの日本は、ペルシャ湾からホルムズ海峡を抜けて日本へ至る「シーレーン」に一角を依存してきましたが、武力衝突や拿捕のリスクが高まるなか、その脆弱性が改めて浮き彫りになりました。

今回のインド沖での積み替えは、友好国であるインドの影響力を活用した新たな選択肢となります。インドは中東諸国と良好な関係を維持しており、その近海を中継拠点とすることは、物理的な距離の短縮だけでなく、外交的なセーフティーネットとしての機能も期待されています。

また、高市早苗首相も、中東情勢の悪化を見据え、日本へ物資を供給するアジア諸国との連携強化を検討する意向を表明しています。これには原油だけでなく、液化天然ガス(LNG)や食料品などの安定供給も含まれており、広範なサプライチェーンの再構築が急務となっています。経済産業省の関係者は、「特定のルートに依存する時代は終わった。今後はインド洋周辺でのハブ機能の活用や、南米・アフリカからの直接輸入など、あらゆる可能性を排除せずにエネルギーの空白を作らない努力を続ける」と強調しています。

一方で、原油価格の国際指標であるWTI原油先物は100ドルを超える高値圏で推移しており、輸送ルートの変更に伴うコスト増が国内の物価に波及する懸念も拭えません。日本がエネルギー安全保障の「強靭化」をどこまで進められるのか、今回のENEOSの事例は、今後の日本のエネルギー戦略を占う重要な試金石となるでしょう。

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