
2025年10月12日、トランプ米大統領が中国製品に対して100%の追加関税を課すと表明したことで、米中貿易摩擦が再び激化している。この決定は、中国が9日に発表したレアアース(希土類)の輸出規制強化に対する対抗措置とされ、11月1日から実施される予定だ。同時に、自民党の公明党が連立政権からの離脱を決定したことで、高市早苗新総裁への期待を背景とした「サナエノミクス相場」にも暗雲が立ち込めている。
この二重の衝撃により、日経平均先物は10月11日に前日比2420円安の4万5200円まで急落し、週明け14日の東京株式市場は大荒れの様相を呈する可能性が高まっている。投資家の間では、高市政権への期待で上昇していた株価が一転して調整局面に入るとの見方が強まっており、リスクオフの動きが加速している。
トランプ大統領の100%追加関税発表は、市場に大きな混乱をもたらした。10日のニューヨーク株式市場では、ダウ平均株価が878.82ドル下落し、4万5479.60ドルで取引を終えた。中国に対する追加関税の引き上げを受けて、Amazon(アマゾン)やNVIDIA(エヌビディア)などの株式が売られ、IT企業を多く含むナスダック総合指数も820.20ポイント下落した。
中国商務省は12日、この措置に対して強く反発し、「高い関税をかけることは、両国が適切な関係を築く方法ではない」と批判した。さらに、「米側が一方的な行動を続けるなら、中国は必ず相応の措置を講じて、中国の正当な権利利益を守る」と報復の意向を明確にした。
レアアース分野では、中国が世界生産の約70%、精製の約90%を占めており、その戦略性を利用した厳しい輸出規制となっている。米国企業が中国産のレアアースを含む製品を輸出する場合、中国当局からライセンスを取得することが求められ、外国の軍との関係を持つ企業にはライセンスが付与されない。
今回の米中貿易摩擦再燃は、日本企業のサプライチェーンに多大な影響を与える可能性が高い。特に自動車産業では、25%の追加関税が継続されると、トヨタやホンダなど主要自動車メーカーが現在の会計年度だけで合計190億ドル(約2兆7000億円)の損失を出す恐れがあると指摘されている。
関税のコストは通常、サプライヤー、自動車メーカー、消費者が3分の1ずつを負担する構造となっており、高い関税は長年にわたって日本の自動車産業を支えてきた中小のサプライヤー企業に大打撃を与える。この結果、日本の労働力の約8.3%を占める560万人の雇用が脅かされる可能性がある。
製造業全体では、輸送用機器への影響が最も大きく、産業GDP を4.0%押し下げる計算となっている。設備機械(マイナス2.5%)、電気・電子機器(マイナス2.4%)への影響も深刻で、化学製品、ゴム・樹脂製品、金属製品といった製造業種においてもそれぞれ2%程度の減少が予想される。
高市政権への期待に暗雲
一方で、国内政治情勢の不安定化も市場の重荷となっている。公明党の連立政権離脱により、高市新総裁の政策実行能力に疑問符が付いている。高市氏の経済政策「サナエノミクス」への期待で上昇していた株価だが、政治基盤の弱体化により政策の実現性に不透明感が強まった。
野村證券では「サナエノミクス」を反映して2026年末の日経平均株価予想を52,000円に引き上げていたが、公明党の離脱により、防衛・経済安全保障分野への投資拡大や積極財政政策の実現に向けたハードルが一層高くなった。
経団連の筒井義信会長は公明党の離脱表明について「誠に残念」とコメントし、「内外に解決が急がれる政策課題が山積し、重要な外交日程が迫る中、政治の安定は不可欠」と強調した。日本商工会議所の小林健会頭も「国政に遅滞が出ることは非常に困る。いろいろなことをしている間にも経済は動いている」と懸念を表明した。
米中貿易摩擦の再燃と国内政治の不安定化という二重の逆風により、日本経済とビジネス環境は新たな試練の時期を迎えている。企業は迅速なサプライチェーンの見直しとリスク管理体制の強化が急務となっており、投資家にとってもより慎重な投資判断が求められる局面となった。









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