
トライアスロン女子で東京2020オリンピック、パリ2024オリンピックと2大会連続で日本代表として出場した高橋侑子(34歳、相互物産)が10月29日、自身のインスタグラムで現役引退を発表しました。「今シーズン延長戦のような形で臨みましたが、ここでやり切れたという気持ちになれたため、このような決断に至りました」とコメントし、11月9日に宮崎県で開催されるワールドトライアスロンカップを現役最後のレースとして臨むことを明らかにしました。
東京都三鷹市出身の高橋選手は、父親の影響で幼少期からトライアスロンを始め、2007年にジュニア日本代表として国際大会にデビューしました。大学時代には日本学生選手権で4度の優勝を果たし、2016年には世界大学選手権で世界チャンピオンに輝きました。
2017年からはポルトガル出身のパウロ・ソウザコーチ率いるチームに加入し、海外に拠点を移して本格的に世界のトップを目指す道を歩み始めました。この決断が、高橋選手の競技人生を大きく変えることとなります。コーチとの出会いにより、トレーニングへの姿勢や競技への向き合い方が変化し、メンタル面でも大きく成長したと語っています。
高橋選手の最大の功績は、2018年のジャカルタ・パレンバン大会と2023年の中国・杭州大会でのアジア競技大会2連覇です。両大会で個人とミックスリレーの2種目で金メダルを獲得し、日本女子トライアスロン界の第一人者として確固たる地位を築きました。さらに、アジアトライアスロン選手権では2017年、2022年、2024年、2025年と通算4度の優勝を達成し、アジア競技大会での4個の金メダルと合わせてアジアタイトル6冠という輝かしい記録を残しました。
国内でも2018年、2019年、2023年、2024年の日本トライアスロン選手権で4度の優勝を果たし、長年にわたり日本女子トライアスロン界を牽引してきました。特に2024年11月の日本選手権では、パリ五輪後にモチベーションの低下に悩まされながらも、2年連続4度目の優勝を飾り、その実力を改めて証明しました。
東京五輪では個人18位、混合リレー13位という結果でしたが、パリ五輪では個人40位に終わり、大会後に引退を決意していました。高橋選手は「正直、こんな気持ちになるとは思っていなかった」と振り返り、パリ五輪を自身の集大成として臨んだものの、思うような結果を残せず、ソウザコーチに引退の意思を伝えました。
しかし、コーチから「そう思った気持ちも分かるけど、競技を終えて何をやりたいんだ?まだこの決断を出すのは早いんじゃないか?」と声をかけられ、引退後にやりたいことが明確ではなく、体もまだ動くことから、もう少し競技を続けることを決意しました。この「延長戦」として臨んだ2024年シーズン後半から2025年シーズンで、高橋選手は新たな経験と挑戦を重ね、「ここでやり切れた」という満足感を得ることができたといいます。
日本女子トライアスロン界への貢献と次世代への期待
高橋侑子選手は、34歳という年齢まで第一線で活躍し続け、日本女子トライアスロン界の顔として若手選手たちの目標となる存在でした。特に2024年の日本選手権では、若手選手たちが自身に追いつき、激しいトップ争いを展開する場面もあり、「全体的な力が上がってきているのではないかと感じて嬉しい」とコメントし、若手の成長を心から喜んでいました。
高橋選手の引退により、日本女子トライアスロン界は大きな節目を迎えますが、高橋選手が築いた実績と示した道は、次世代の選手たちにとって大きな財産となるでしょう。現役最後のレースとなる11月9日のワールドトライアスロンカップでは、「これまでの想いを込めて、精一杯頑張り、楽しみたい」と意気込みを語っており、多くのファンやサポーターが、日本女子トライアスロン界を長年支えてきたレジェンドの有終の美を期待しています。












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