京都大学、iPS細胞を活用した白血病治療で2027年にも治験開始へ

京都大学、iPS細胞を活用した白血病治療で2027年にも治験開始へ

京都大学は、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を活用した新たな白血病治療法の臨床試験(治験)を2027年にも開始する計画を発表しました。この画期的な治療法では、あらかじめ条件を満たした健康な人の細胞から作製したiPS細胞を使用します。従来の移植治療では、患者と白血球の型(HLA)が一致するドナー(提供者)を探す必要があり、血縁者などからドナーを見つけるまでに長い時間を要することが大きな課題となっていました。今回の新治療法では、事前に作製・凍結保存したキラーT細胞を使用するため、ドナー探しにかかる時間を大幅に短縮でき、白血病と診断された後すぐに治療を開始できるという大きなメリットがあります。

白血病は血液細胞に異常が生じ、がん細胞として増殖する疾患です。国立がん研究センターがん情報サービスの「がん統計」によると、2021年に国内で新たに白血病と診断された患者数は約1万4808人にのぼります。これまでの治療では、異常な血液細胞を除去した後、ドナーから提供される「造血幹細胞」を移植する手法が用いられてきました。しかし、HLAが適合するドナーを探すには骨髄バンクでのコーディネートだけでも数カ月を要するケースがあり、進行の速い急性白血病では治療の開始が遅れることが患者にとって深刻な問題となっていました。

京都大学医生物学研究所の河本宏教授らの研究チームは、従来の造血幹細胞移植とは異なるアプローチで白血病治療に挑みます。具体的には、拒絶反応が起きにくいように工夫した第三者由来のiPS細胞から、免疫細胞の一種である「キラーT細胞」を作製します。このキラーT細胞は、がん細胞を直接攻撃・殺傷する能力を持つ細胞で、血液中のがん細胞の目印となるWT1抗原を認識できるように遺伝子操作が施されています。河本教授らは2013年に世界で初めてiPS細胞からがん抗原特異的キラーT細胞の再生に成功しており、この技術は各国で特許が成立している画期的なものです。

京大発スタートアップが技術を引き継ぎ実用化を目指す

今回の医師主導治験は京都大学医学部附属病院で実施される予定で、65歳以上の急性骨髄性白血病患者を対象に、作製したキラーT細胞を投与して安全性や有効性を検証します。治験の計画は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「革新的がん医療実用化研究事業」にも採択されており、研究の推進が支援されています。

iPS細胞からがんを攻撃するキラーT細胞を作る技術は、2019年に設立された京都大学発のバイオスタートアップであるリバーセル(京都市)に技術移管されています。京都大学での治験で得られた成果はリバーセルが引き継ぎ、白血病以外のがん治療への応用も視野に入れながら実用化を進めていく方針です。リバーセルは河本教授を最高技術顧問に迎え、他家iPS細胞から大量培養することで、患者を待たせることなく低コストで安定した品質の細胞製剤を提供できる体制の構築を目指しています。

この新治療法が実用化されれば、患者は白血病の診断後すぐに治療を受けられるようになり、ドナー不足という長年の医療課題の解決にも大きく貢献することが期待されています。京都大学は安全性と有効性の確認を経て、早期の実用化を目指しています。

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