
安倍晋三元首相銃撃事件の裁判員裁判で、殺人などの罪に問われている山上徹也被告(45)に対し、奈良地裁で検察が無期懲役を求刑しました。 検察は論告で「戦後史に前例をみない、極めて重大な結果をもたらした」と述べ、要人に対する銃撃の模倣犯を誘発する恐れや、民主主義の根幹を揺るがした社会的影響の大きさを強く指摘しました。 判決は来年1月21日に言い渡される予定です。
事件は2022年7月、奈良市で遊説中だった安倍元首相が手製の銃で撃たれ死亡したもので、山上被告は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に傾倒した母親の多額献金により家庭が崩壊したことへの恨みを動機として供述しています。 教団への打撃を狙う中で、関連団体にビデオメッセージを寄せるなどしていた安倍氏を「日本で最も影響力を持つ教団シンパ」とみなしたとされます。 裁判を通じて、旧統一教会問題を契機にした被害者救済法制や寄付規制の議論が加速し、元信者らによる損害賠償請求も全国で相次いでいます。
18日の公判では、まず安倍氏の妻・昭恵さん(63)の意見をまとめた書面が代理人弁護士により読み上げられました。 昭恵さんは「突然の夫の死は衝撃的すぎて頭が真っ白になった」「最期に言葉を交わせず、失った喪失感は一生消えることはありません」と心境をつづり、「被告には自分のしたことを正面から受け止め、罪を償うことを求めます」と訴えました。 その間、山上被告は下を向き、ときおりメモを取り、検察の無期求刑の瞬間には深く俯く(うつむく)場面も見られました。
検察側は論告で、手製の銃器や火薬で国会議員を殺害し得ることを「世に知らしめた」点を重くみて、「模倣性が極めて高く、社会的影響は極めて大きい」と強調しました。 また、旧統一教会への恨みが動機とされる一方で、安倍氏を襲撃対象として選んだ理由について「論理的な飛躍があり、最後まで納得できる説明はない」と指摘し、「社会を変革するために人を殺害する行為は法治国家で絶対に許されない」と非難しました。
一方、弁護側は最終弁論で、被告の不遇な生育歴や家庭の崩壊、教団への絶望感が事件の背景にあると主張しました。 その上で、山上被告が当初から起訴内容を認めていることや、教団問題が政治・社会全体に構造的に存在していたことも踏まえ、「懲役20年までにとどめるべきだ」と量刑の軽減を求めました。 旧統一教会を巡る政治家との関係が事件後に次々と明らかになったことも、弁護側は背景事情として言及しています。
山上被告は最終意見陳述を拒否 法廷での初謝罪と今後の焦点
公判の終盤では、裁判長が「何か述べることがあれば証言台へ」と促しましたが、山上被告は首を横に振り「ありません」とだけ答え、最終意見陳述を行わない姿勢を示しました。 これに対し、傍聴席からは「最後は何か話すのではと思っていたが、意外だった」との声も上がったと報じられています。 一方で、今月4日の被告人質問では、安倍氏の遺族に対して「非常に申し訳ない」「弁解の余地はない」と初めて法廷で謝罪し、自身も肉親を亡くした経験から遺族の苦しみを思うと述べていました。
事件後、日本社会では要人警護の在り方や銃規制、政治と宗教の関係が改めて問われることになりました。 警察庁は安倍氏銃撃事件を受けて警護体制を抜本的に見直し、遊説時の動線管理強化などを進めています。 また、旧統一教会の高額献金被害を巡り、国は被害者救済法の整備や解散命令請求に踏み切り、関連訴訟の賠償請求額は調停成立分を含めて70億円超に達するなど、司法の場での争いも続いています。
今後の焦点は、量刑判断においてどこまで被告の生い立ちや宗教団体への恨みといった事情を考慮するかにあります。 要人警護や寄付規制など制度的な対応が進められている一方で、「個人の犯罪」と「社会・政治の構造」の切り分けをどう位置付けるのかという論点も、判決理由で注目されます。 奈良地裁は来年1月21日に判決を言い渡す予定であり、その判断は旧統一教会問題を含めた日本社会の今後の議論にも大きな影響を与えるとみられます。









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