
4月1日、大規模SNS事業者に対する「情報流通プラットフォーム対処法」(通称:情プラ法)が施行され、日本のインターネット環境に新たな規制の枠組みが導入されました。
この法律の最大の特徴は、SNS上での権利侵害(誹謗中傷など)に対する迅速な対応を事業者に義務付け、違反した場合には最大1億円の罰金が科せられる点です。SNS事業者に対する罰則付き法規制としては日本初となります。
具体的には、被害者から削除依頼を受けた場合、事業者は7日以内に「削除する」「しない」もしくは「判断に時間を要する理由」を通知することが義務化されました。これまで「窓口が見つからない」「申請後の音沙汰がない」「解決まで3ヶ月かかる」といった問題が指摘されていたことへの対応策です。
法律は大きく「発信者情報開示に関する規律」と「投稿削除に関する規律」の二本柱で構成されています。
前者は従来のプロバイダ責任制限法の枠組みを引き継ぎ、後者が今回新設された部分です。さらに事業者には、削除基準の策定・公表や年次報告も義務付けられています。
法整備の背景には、2020年の「テラスハウス」出演者木村花氏の自殺事件があり、総務省によれば2023年の違法・有害情報相談件数は6,463件に上るなど、SNS上の権利侵害が社会問題化していることが挙げられます。
この法律により、SNS上での誹謗中傷被害者の救済がスピードアップし、プラットフォーム側の責任意識が高まることが期待されています。
「情プラ法」施行でSNS事業者の対応はどう変わる?
情プラ法で規制対象となる大規模SNS事業者とは、月間アクティブユーザー数が1,000万人以上、または月間投稿数200万件以上のプラットフォームを運営する事業者のことを指します。X、Instagram、YouTubeなどが該当する見込みです。
この法律により、該当事業者には弁護士などの専門員の配置や、日本語での削除窓口の整備・公表が義務付けられました。
また、被害者本人または代理人からの削除依頼に対しては、7日以内に対応通知が必要です。必ずしもこの期間内に解決する必要はありませんが、解決できない場合は遅延理由の説明が求められます。
情プラ法の運用により、誹謗中傷の拡散抑制や被害の早期収束が期待される一方、表現の萎縮を懸念する声もあります。
しかし、全ての申請に対して削除義務があるわけではなく、適切な判断基準の下で運用されれば、表現の自由を過度に制限することはないとされています。