
令和4年7月に発生した安倍晋三元首相銃撃事件で、殺人などの罪に問われた山上徹也被告(45)に対する裁判員裁判の判決公判が21日、奈良地方裁判所で開かれました。田中伸一裁判長は検察側の求刑通り無期懲役を言い渡しました。殺人などの主な起訴内容に争いはなく、最大の焦点は量刑でした。
弁護側は「最も重くても懲役20年」と訴えていましたが、裁判所は被告の生い立ちが犯行に与えた影響は限定的だと判断しました。
山上被告は令和4年7月8日、奈良市で参院選の応援演説中だった安倍氏を手製のパイプ銃で撃ち、殺害しました。被告は殺人罪のほか、銃刀法違反、武器等製造法違反、火薬類取締法違反、建造物損壊の計5つの罪で起訴されています。
量刑の焦点となったのは、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に翻弄された被告の生い立ちと事件との関連性です。被告の家庭は母親が教団に入信し多額献金を繰り返したことで崩壊状態に陥りました。
教団を憎んでいた兄の自殺もあり、被告は教団に打撃を与えるために幹部襲撃を計画。しかし新型コロナウイルス禍で韓国に拠点を置く教団幹部の来日が見込めず、被告は急遽、襲撃の対象を安倍氏に変更したといいます。弁護側は、安倍氏が教団に親和的な政治家の代表格だったと主張し、被告の教団への恨みと安倍氏に対する銃撃は一直線に結びつくと訴えました。
一方、検察側は「本来の敵」は教団幹部であり、なぜ安倍氏を銃撃したかについては「最後まで納得できる説明はなく、論理的に飛躍がある」と指摘。生い立ちが犯罪の意思決定に与えた影響は限定的だとし、「戦後史に前例を見ない犯行」として無期懲役を求刑していました。
田中裁判長の判決理由によると、「被告の生い立ちが今回の事件の背景や遠因であることは否定できないが、意思決定に大きな影響があったとは認められず、短絡的で自己中心的な犯行だ」と述べました。さらに「多数の人がいる現場で殺意を持って手製銃を発射し、犯行態様は悪質で危険性が高い」と指摘。計画性の高さなどから「最も重い部類に属する事案」として、無期懲役が相当と結論づけました。
遺族コメントと弁護側の対応
判決後、安倍氏の妻・昭恵さんは代理人を通じてコメントを発表。「本日の奈良地方裁判所の判決により、突然の夫の死からの長かった日々に一つの区切りがついたと感じています」と述べ、「被告人は自分のしたことをきちんと正面から見つめ、かけがえのない家族である夫の命を奪い去った罪を償っていただきたい」と心境を明かしました。
一方、弁護団は判決後の記者会見で「控訴するかは被告と協議したうえで判断する」とコメント。審理に参加した裁判員の一人は「能力の高い人物。その能力を犯罪ではなく、もっと他の方向に生かせておれば」と話しています。
この事件をきっかけに、旧統一教会の高額献金や「宗教2世」問題が社会的に注目され、東京地裁は2025年3月、教団に対して解散命令を出しましたが、教団側は即時抗告しています。










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