
東京証券取引所(東証)の20代職員が、企業の未公表情報を利用して親族に株式の売買を推奨した疑いで、証券取引等監視委員会から強制調査を受けていたことが22日、関係者への取材で明らかになりました。
この職員は、東証の上場部開示業務室に所属しており、職務上、上場企業の重要な未公開情報を入手できる立場にありました。金融商品取引法では、このような立場の者がインサイダー取引を行うことを厳しく禁じています。
不審な株取引については、日本取引所自主規制法人も把握しており、監視委は9月頃から関係先の強制調査に乗り出したとみられています。現在、この職員は業務から外れているとのことです。
今回の事案は、つい先日明らかになった、金融庁に出向中の30代男性裁判官によるインサイダー取引疑惑に続くものです。金融商品取引法では、会社関係者だけでなく、上場企業に対して法令に基づく権限を持つ公務員もインサイダー取引規制の対象となります。
違反者には、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方が科せられる可能性があります。東証は日本の株式市場を支える重要な機関であり、その職員による不正行為は市場の信頼を大きく揺るがしかねません。
ネット上では、「インサイダー取引(内部者取引)できる立場の人は高い倫理観と規制が必要だと思う」「氷山の一角でしょうね」「素朴な疑問なんだが、一体どうやってバレたのかな?」などの意見が寄せられています。
日本取引所グループが事実関係認める 「深くおわび申し上げます」
東証の20代職員は、2023年9月からTOBの事前相談窓口を担当していたとのことです。企業買収など、株価に大きな影響を与える重要情報に日常的に接する立場にありました。
東証を傘下に持つ日本取引所グループは、事実関係を認めた上で「引き続き調査に全面的に協力してまいります。上場会社をはじめ関係者の皆様に多大なご迷惑とご心配をおかけしていることを深くおわび申し上げます」とコメントしています。
一方、青木官房副長官は記者会見で「市場を監督する立場にある金融庁と東証の職員が立て続けに証券取引等監視委員会の調査を受けるに至ったことは、大変遺憾だ」と述べました。
また、「調査には全面的に協力すると聞いており、調査結果などを踏まえ、厳正に対処するものと承知している。再発防止策を徹底するなど、日本の金融市場の信用確保に尽力していく必要がある」と、東証に対して厳しい姿勢で臨む考えを示しました。