
3月25日、東京地裁は40年にわたる被害実態を認め、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令を言い渡しました。この決定は宗教法人への最も厳しい措置であり、日本の宗教行政において重要な転換点となります。
鈴木謙也裁判長が「悪質な勧誘による類例なき甚大な被害」と指摘したこの判断は、民法上の不法行為を根拠とする初めてのケースです。これまでオウム真理教などへの解散命令は幹部の刑事事件が直接の理由でしたが、今回は組織的な献金勧誘行為そのものが問われました。
裁判所は検証の結果、1980年代から2009年までに1,500人以上が被った約194億円の被害と、その後も継続した179人・9億円超の追加被害を具体的に認定。「教理の実践」として行われた献金勧誘と、それによる収入の組織的管理という構図が明らかにされました。
今後、教団は東京高裁への即時抗告を予定していますが、高裁で決定が維持されれば直ちに法人格を失い、清算手続きへと進みます。
数百億円と推定される教団資産は、被害者への賠償原資となる可能性が高く、現在集団交渉中の約200人(請求総額50億円超)を始め、多くの被害者にとって救済の道が開かれることになります。
「誤った法解釈に基づく」として決定に反発する教団に対し、林官房長官は「国側の主張が認められた」と評価し、継続的な被害者支援を約束しました。
宗教の自由と違法行為の規制という難しいバランスの中で下された今回の決定は、宗教法人制度のあり方と公共の福祉について社会に新たな問いを投げかけています。
ネット上では、「この組織が日本から奪っていった資産、信者の家族を不幸におとしめた度合い、いかほどか」「旧統一に反対する人を裏切り者と見做して抗告しても逆転すると思う」「これからが大変な状況になる」などの意見が寄せられています。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)とは?
韓国を起源とし、1960年代に日本へ進出した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は、創始者・文鮮明氏の名に由来して海外では「ムーニーズ」とも称されます。大規模な合同結婚式が特徴的で、結婚を救済の中心に据えた独特の教義で知られています。
2022年の安倍元首相銃撃事件を機に、教団による高額献金の強制や政治との関係性が表面化。岸田政権下の調査では国会議員の半数近くが何らかの接点を持ち、教団の行事参加、献金受領、選挙支援など多様な関わりが明らかになりました。
現在、元信者約200人が57億円の損害賠償を求めており、長年にわたる問題が日本社会に与えた影響は計り知れません。今後の世界平和統一家庭連合の動向に注目が集まります。